フィラジル皮下注30mgシリンジ 発売中
HAEの治療目標と治療のポイント
監修:広島市立広島市民病院 病院長 秀 道広 先生
HAE Expert Opinions Vol.1
HAEの治療目標
病気の完全なコントロール達成と患者さんの生活を健全化
遺伝性血管性浮腫(HAE)では、全身のあらゆる部位(四肢、顔面、消化管など)に局所性の血管性浮腫をきたします。発作が生じる部位や頻度は患者さんによって様々ですが、まれではあるものの喉頭に浮腫が生じると呼吸困難や窒息をきたすことがあります。致死的でなくとも、四肢や顔面の浮腫による見た目の変化や、消化管の浮腫による強い腹痛は、HAE患者さんのQOLを著しく低下させます。そのため、HAE治療では患者さんのQOL向上が重要な課題となっています。
WAO/EAACI国際ガイドライン(2021年版)1,2)でも、HAEの治療目標として、病気の完全なコントロール達成と患者さんの生活の健全化が推奨されています。
HAE治療のポイント
長期予防治療とオンデマンド治療、両方が重要
HAEは、診断がつけば有効な治療を受けることができる疾患です。HAEの治療には、急性発作が起こった場合のオンデマンド治療と、発作を予防する短期予防治療及び長期予防治療があります(図)。短期予防治療は発作が誘発される可能性が高い状況(歯科治療、分娩、小外科手術など)で浮腫の出現を防ぎ、長期予防治療は定期的に薬剤を投与することで浮腫の出現を防ぎます。
これらの治療のうち、HAE患者さんの日常生活で重要となるのはオンデマンド治療と長期予防治療です。長期予防治療は、先述のHAEの治療目標である病気の完全なコントロールと患者さんの生活の健全化を達成するために最も重要な治療です1)。一方で、長期予防治療だけですべての発作を防げるわけではなく3-5)、発作が起こった場合は速やかにオンデマンド治療を行う必要があります。HAE発作は治療開始までの時間が短いほど症状消失までにかかる時間が短いことがわかっており6)、いかに早く治療を開始できるかが患者さんのQOLに影響を及ぼすと考えられます。したがって、長期予防治療だけでなく、急性発作に対しても常に備えておくことは非常に重要です。
なお、長期予防治療とオンデマンド治療とでは、使用できる薬剤が異なります。これは、薬剤によって作用機序や適応が異なるためです7-11)。そのため、HAE患者さんのQOL向上には、長期予防治療薬とは別に、オンデマンド治療薬を携帯することが望ましいと考えられています。
海外ガイドラインにおけるオンデマンド治療
WAO/EAACI国際ガイドライン(2021年版)1,2)では、HAEの発作治療について、すべての発作にオンデマンド治療を考慮することを推奨し、発作時はできるだけ早く治療することを推奨しています。また、すべての患者さんに対して、少なくとも発作2回分に十分なオンデマンド治療薬を常時携帯することを推奨しています。
- Maurer M, et al. Allergy. 2022; 77(7): 1961-1990.
- 森桶聡ほか. アレルギー. 2023; 72(3): 237-272.
- 社内資料(承認時評価資料):ラナデルマブの遺伝性血管性浮腫患者を対象とした海外第Ⅲ相試験成績
- Banerji A, et al. JAMA. 2018; 320(20): 2108-2121.[COI:本試験はDyax社(現:Takeda)の資金提供により実施された。本論文の著者のうち3名はShire社(現:Takeda)の社員である。著者にDyax社又はShire社(現:Takeda)よりコンサルタント料等を受領している者が含まれる。]
- Lumry WR, et al. Allergy. 2021; 76(4): 1188-1198.[COI:本試験はShire社(現:Takeda)の資金提供により実施された。本論文の著者のうち3名はTakedaの社員である。著者に同社よりコンサルタント料等を受領している者が含まれる。]
- Longhurst H, et al. Lancet. 2012; 379(9814): 474-481.
- 電子添文:タクザイロ皮下注300mgシリンジ(2023年6月改定)
- 電子添文:ベリナート皮下注用2000(2022年11月改定)
- 電子添文:オラデオカプセル150mg(2023年4月改定)
- 電子添文:フィラジル皮下注30mgシリンジ(2022年8月改定)
- 電子添文:ベリナートP静注用500(2019年10月改定)