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免疫低下と感染症流行の関連とは

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免疫低下と感染症流行の関連とは
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免疫低下と感染症流行の関連とは

2023年のインフルエンザの流行状況を考える

日本において、2023年は季節性インフルエンザの流行が確認され(図1)、2023/24シーズンは過去のシーズンよりも早い時期の流行拡大がみられました1)

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図1
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図1

この状況について、2009年のA(H1N1)pdm09流行状況及び2023年のアデノウイルス感染症の流行状況が参考になります。まず、2009年のA(H1N1)pdm09流行状況のデータでは、第28週(7/6~7/12)以後、検出報告数の約98%がA(H1N1)pdm09であったと報告されています2)。そして、2009年のインフルエンザの定点当たり報告数では、インフルエンザの発生は秋から一定のペースで増加し、11月末から12月初めにピークを迎え、その後に減少しており、この秋から12月までの流行はの主体はA(H1N1)pdm09 であったと推定されます(図2)2,3)。すなわち、インフルエンザの流行は冬季に限定されるわけではないことが示されています。

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図2
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図2

アデノウイルス感染症の流行状況においては、2023年ではアデノウイルス3型による咽頭結膜熱が季節外れの過去最大の流行をみせました(図3)1)。この急激な感染拡大の背景には、COVID-19への感染対策が緩和され、お盆の時期に日本国内で多くの人々が旅行で移動したことが推察されます。これにより、大都市から地方へとウイルスが拡散し、学校を中心に地方での感染が拡大したと考えられます。さらに、2023年と比較して直近の5年間は咽頭結膜熱の発生は減少しており、アデノウイルス3型に対する抗体が十分に形成されていない状態であったため、2023年に咽頭結膜熱が流行したことがうかがえます(図3)1)

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図3
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図3

このように免疫の状況は感染症の流行に大きく影響していることが示唆され、免疫が低下していた場合には、季節に関わりなく流行となることが考えられます。


COVID-19流行後のA/ビクトリア/1/2020の抗体保有状況の変化

抗体保有状況については、厚生労働省による感染症流行予測調査によって毎年報告されています。 A(H1N1)に関連する感染防御抗体であるHIについては、抗体価1:40以上で感染リスクを50%に抑える目安となると考えられています4)。COVID-19の流行以前のデータでは、A(H1N1)に対し、70%の方がHI抗体価1:40以上の抗体をインフルエンザ流行前に有していたことが報告されています5)。一方、 2022年から2023年シーズン前のデータでは、A/ビクトリア/1/2020 [A(H1N1)pdm09 亜型]の抗体保有率が最も高い20代前半の国民でも、HI抗体価1:40以上を有していたのは30%程度に留まっていたことが報告されました(図4)4)

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図4
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図4

そのため、2023年では免疫低下の状況下にあったと考えられ、インフルエンザの流行が早期化し、また、そのピークがより大きくなったと推察されます。同様の抗体保有率の低下傾向は、A(H3N2)やB型山形系統及びB型ビクトリア系統でも確認されており、COVID-19の流行後に、これらのタイプが流行する可能性もあると考えられます4)


日本におけるインフルエンザの流行状況予測とワクチン接種について

日本と同じく北半球に位置する米国のデータをみると、2023年のインフルエンザ感染者数は増加していたことが報告されています6)。年齢別にみると、米国でも日本と同じように、感染の拡大は小児から始まり、学校を通じて拡散し、最終的に家庭や地域社会に広がる傾向が見受けられます6)
インフルエンザウイルスにはA(H1N1)pdm09、A(H3N2)、B型山形系統、B型ビクトリア系統の4つのタイプが存在します。日本においては、これまでA(H3N2)が比較的多くみられており、特に夏から秋にかけて、A(H3N2)に感染するケースが多くありました。しかし、米国では2023年時点で、A(H1N1)の感染が最も拡大しており、日本でもA(H1N1)の流行が確認されました。さらに、B型の感染者も増加しました。このような状況から、A(H3N2)に感染した後でも、A(H1N1)やB型に感染する可能性が考えられます。
このような状況を踏まえると、すでにインフルエンザに罹患した場合でも、ワクチン接種が必要であるといえます。その理由は、複数のウイルスが同時期に流行している場合、2回目や3回目の感染を予防するためにもワクチン接種は推奨されるからです。

 

参考資料

1)国立感染症研究所:感染症発生動向調査 週報(IDWR)2023年第51週(12月18日〜12月24日)、2023年第52週(12月25日〜12月31日):通巻第25巻第51・52合併号
    https://www.niid.go.jp/niid/images/idsc/idwr/IDWR2023/idwr2023-51-52.pdf[2024年1月15日閲覧]
2)国立感染症研究所:IASR. 2009; 30: 287-297.
    http://idsc.nih.go.jp/iasr/30/357/dj3571.html[2024年1月15日閲覧]
3)国立感染症研究所:感染症発生動向調査 週報(IDWR)2009年第52週(12月21日~12月27日)、2009年第53週(12月28日~1月3日):通巻第11巻第52・53合併号
    http://idsc.nih.go.jp/idwr/kanja/idwr/idwr2009/idwr2009-52-53.pdf[2024年1月15日閲覧]
4)国立感染症研究所:インフルエンザ抗体保有状況 -2022年度速報第1報- (2022年11月30日現在)
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/je-m/2075-idsc/yosoku/sokuhou/11553-flu-yosoku-rapid2022-1.html[2024年1月15日閲覧]
5)国立感染症研究所:2018年度感染症流行予測調査 年齢群別のインフルエンザ抗体保有状況の年度比較, 2014~2018年
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/y-graphs/8797-flu-yosoku-year2018.html[2024年1月15日閲覧]
6)CDC:FLUVIEW interactive Outpatient Respiratory Illness Surveillance
    https://www.cdc.gov/flu/weekly/[2024年1月15日閲覧]