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COVID-19の罹患後症状と包括的な呼吸器感染症対策

COVID-19の罹患後症状と包括的な呼吸器感染症対策

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COVID-19の罹患後症状と包括的な呼吸器感染症対策
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COVID-19の罹患後症状と包括的な呼吸器感染症対策

COVID-19の罹患後症状の概要

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の罹患後、多くの症例では時間経過に伴い症状が改善します。しかし、一部の症例においては、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳等の罹患後症状が認められることが明らかになってきました(図1)1)

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図1
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WHO「Post COVID-19 condition」では、COVID-19の罹患後症状は「COVID-19に罹患後、初回SARS-CoV-2感染から3ヵ月後に新たな症状が継続又は発現し、これらの症状が少なくとも2ヵ月間持続し、他疾患による説明がつかないもの」と定義されています2)。英国全域を対象とした前向き多施設MRI検査追跡研究において、COVID-19罹患後に退院した成人(18歳以上)に多臓器MRI検査を実施し、COVID-19により臓器にさまざまな変化を引き起こす可能性が指摘されました3)。また、罹患後症状は変異株であるオミクロン株でも認められており4)、厚生労働省において実態把握、適切な医療へのアクセス向上、社会保障制度による支援、情報の周知と啓発、病態解明・治療法の開発といった種々の取り組みがなされています5)


COVID-19の罹患後症状に関する報告

罹患後症状に関しては、日本のみならず世界各国でも研究が進められています。例えば、小児においては膵臓のβ細胞に対する抗体が生成される「Islet Autoimmunity」の発現が確認されています。欧州ではCOVID-19の流行期間を通じて1型糖尿病の遺伝リスクが高い生後4~7ヵ月の乳児を2歳になるまで追跡した調査が実施され、SARS-CoV-2感染と膵β細胞に対する自己抗体発現の関連についての検討が行われました6)。本調査により、SARS-CoV-2抗体が検出されなかった場合と比較して、検出された場合には自己抗体の発現率が高いことや、両抗体の発生時期の関連が明らかとなり、将来的な1型糖尿病発症率への影響等について研究が進んでいます。
成人においては、COVID-19感染後1年までの虚血性心血管合併症のリスクが高まるとされていますが、そのメカニズムの一つとして、SARS-CoV-2のRNAが重症COVID-19症例の剖検時に採取された冠動脈病変で検出されたことから、SARS-CoV-2が冠動脈に感染し、プラークの炎症を誘発することで、急性冠症候群などを引き起こし、長期的な心血管系リスクを増加させる可能性があることを指摘した報告があります7)。また、COVID-19による味覚障害はよくみられる罹患後症状の一つです。味覚障害のある人における舌の生検結果において、糸状乳頭、葉状乳頭、円蓋状乳頭にSARS-CoV-2のRNAが検出されたとともに、組織学的には味蕾の破壊を伴う重度の炎症が認められたことが示されています8)。これらの事実から、引き続きSARS-CoV-2に対する警戒が必要であることが考えられます。


COVID-19は特別に扱うべき感染症か?

ここまでCOVID-19罹患後症状についてご紹介してきました。では、インフルエンザ、RS、ヒトメタニューモといったウイルス感染症ではCOVID-19ほどの警戒は不要なのでしょうか。
米国では「All Respiratory Viral Infections」、つまり、すべての呼吸器感染症に対して適切な対策を講じるべきだという論文が発表されています9)。例えばインフルエンザウイルスの感染では、炎症によるサイトカインの放出、アテローム性動脈硬化プラークの破壊、冠動脈を急性閉塞させる可能性のある血栓形成などにより、急性心筋梗塞やその他の心血管障害のリスクが上昇すると考えられています10)。このような状況から考えると、COVID-19だけでなく、他の呼吸器感染症も考慮し、体への影響を最小限に抑えるためのワクチンや状況に応じた薬物治療が必要とされます。
今後は、COVID-19やインフルエンザだけでなく、呼吸器感染症に対する包括的な対策が必要だと考えます。最後に、包括的な呼吸器感染症対策についてご紹介します(図2)。伝播状況によりリスクは異なるため、流行情報やサーベイランスのデータを適切に確認し、リスクに応じた対策を講じていくことが強く求められます。また、自分が感染しないために、基本的な感染症対策や効果的な換気を考慮すること、他の方に感染させないために症状を感じた場合には、しっかり休むことが大切です。そして、ワクチンで予防できる感染症については、ワクチン接種が重要だと考えます。

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図2
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参考資料

1)厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)について 1.症状が長引くことがあることを知っていますか?
    https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001159544.pdf[2024年1月16日閲覧]
2)WHO:Post COVID-19 condition (Long COVID)
    https://www.who.int/europe/news-room/fact-sheets/item/post-covid-19-condition[2024年1月16日閲覧]
3)C-MORE/PHOSP-COVID Collaborative Group. Lancet Respir Med. 2023; 11(11): 1003-1019.
4)第56回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会予防接種基本方針部会・第79回厚生科学審議会感染症部会 資料
    https://www.mhlw.go.jp/content/10906000/001146453.pdf[2024年1月16日閲覧]
5)厚生労働省:新型コロナウイルス感染症の罹患後症状(いわゆる後遺症)に対する厚生労働省の取組
    https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001159547.pdf[2024年1月16日閲覧]
6)Lugar M, et al.: JAMA. 2023; 330(12): 1151-1160.
7)Eberhardt N, et al.: Nat Cardiovasc Res. 2023; 2(10): 899-916.
8) Henin D, et al.: Cells. 2022; 11(7): 1248.
9)Klompas M, et al.: N Engl J Med. 2023; 389(1): 4-6.
10)MacIntyre CR, et al.: Heart. 2016; 102(24): 1953-1956.