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組換えコロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン
日本におけるSARS-CoV-2に対する抗体保有状況と新型コロナワクチン接種の必要性

日本におけるSARS-CoV-2に対する抗体保有状況と新型コロナワクチン接種の必要性

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日本におけるSARS-CoV-2に対する抗体保有状況と新型コロナワクチン接種の必要性
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日本におけるSARS-CoV-2に対する抗体保有状況と新型コロナワクチン接種の必要性

米国及び日本におけるSARS-CoV-2に対する抗体保有状況

2023年9月ごろから世界で主流となったSARS-CoV-2のEG.5.1変異株は、米国での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行に寄与していると考えられます。COVID-19の流行に伴い、米国では入院者数の増加のみならず、死亡者数の増加も確認されました1)。2023年2月に初めて報告されたEG.5.1変異株では、新型コロナワクチンによって誘導された中和抗体が十分に働かなくなる遺伝子変異を有している可能性が指摘されています2,3)。  このような免疫回避能を有するウイルスにより、COVID-19の流行が生じていることが推察されています。
米国血清疫学サーベイランスでは、米国においては16歳以上の人口の76.4~91.8%が感染によるSARS-CoV-2に対する抗体(抗N抗体)を保有していることが報告されています(2023年10-12月時点)(図1)4)

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図1
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米国では多くの国民が一度はCOVID-19に感染したため、免疫が形成されていると考えられますが、それでも新たな流行を抑制するためには不十分であるといわれています。
日本においても、献血時の検査用検体の残余血液を用いた新型コロナウイルスの抗体保有割合実態調査が実施され、結果が報告されています。感染による抗体(抗N抗体)を保有する割合は日本全体で42.8%、各都道府県において34.1~63.0%と米国には及ばない状況であることが示されました(図2)5)。そのため、日本においてはCOVID-19の再拡大が生じた場合、感染者数の増加リスクがあることが推察されます。 

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図2
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図2

日本は新型コロナワクチン接種が進んでいるから問題ないとする意見もありますが、厚生労働省のデータによれば、日本において新型コロナワクチンを2回接種(初回接種完了)した人は77.90%、3回以上接種(追加接種実施)した人は69.11%です(2024年1月14日時点)6)
新型コロナワクチンを3回接種することによってCOVID-19の重症化を予防できるとされていますが、日本には3回以上の新型コロナワクチン接種を受けていない人が約30%存在することや、さらに3回目の接種を受けても、それ以降接種をしておらず、新型コロナワクチンによる予防効果が時間とともに低下7)している方もいることを考慮すると、COVID-19の流行リスクは依然として存在すると考えられます。


新型コロナワクチン接種に関する専門家の意見及び研究報告

新型コロナワクチン接種に関して、かつてCDC(アメリカ疾病予防管理センター:Centers for Disease Control and Prevention)に所属していた著名なワクチン研究者である米国のポール・オフィット氏は、新型コロナワクチンのブースター接種にもある程度の効果は認められてはいるものの、感染予防としては十分とはいえないが、高齢者、重症化リスクが高い複数の合併症を有する場合、免疫が低下している場合は、重症化予防の観点からブースター接種を考慮すべきだと述べています8)。 SARS-CoV-2は、変異により免疫から逃れる株の出現が今後も予測されるため、感染を避けることは難しく、感染予防よりも重症化予防について重点的に考えることが必要であると考えます。
また、SARS-CoV-2感染及び新型コロナワクチン接種の両方により得られる“ハイブリッド免疫”に関しての報告もあります。SARS-CoV-2感染後に新型コロナワクチンを接種した症例では、感染や入院、重症化を抑制する割合は、1・2回目接種又は最終感染後12ヵ月の入院又は重症化予防効果は97.4%、再感染予防効果は41.8%、SARS-CoV-2感染のみを経験した症例ではそれぞれ74.6%、24.7%であり、ハイブリッド免疫を有する集団では、予防効果の低下は緩やかになり、長期間持続する可能性があることが報告されています(図3)9)。なお、3回目接種又は最終感染後6ヵ月の入院又は重症化予防効果は95.3%、再感染予防効果は46.5%でした。

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図3
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おそらく、今後のCOVID-19への対応において、強力な集団免疫を獲得することは難しいと考えられますが、ハイブリッド免疫を多くの国民が保有することで、新たな病原性を高める変異が生じなければ、重症化率は減少することが予測されます。日本においては、抗体保有割合が40%程度に留まることから、今後も新型コロナワクチン接種促進に努め、その割合を向上させることが必要だと考えられます。

 

参考資料

1)Centers for Disease Control and Prevention: COVID Data Tracker.
    https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#datatracker-home[2024年1月15日閲覧]
2)国立感染症研究所:新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の変異株 EG.5.1系統について
    https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2551-cepr/12237-sars-cov-2-eg-5-1.html[2024年1月15日閲覧]
3)Jian F, et al.: PLoS Pathog. 2023; 19(12): e1011868.
4)Centers for Disease Control and Prevention:2022-2023 Nationwide COVID-19 Infection- and Vaccination-Induced Antibody Seroprevalence (Blood donations)
    https://covid.cdc.gov/covid-data-tracker/#nationwide-blood-donor-seroprevalence-2022[2024年3月14日閲覧]
5)厚生労働省:第122回(令和5年6月16日)新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード 事務局提出資料
    https://www.mhlw.go.jp/content/001109157.pdf[2024年1月15日閲覧]
6)デジタル庁:ワクチン接種記録システム: (VRS)  新型コロナワクチンの接種状況
    https://info.vrs.digital.go.jp/dashboard[2024年1月15日閲覧]
7)Thomas SJ, et al.: N Engl J Med. 2021; 385(19): 1761-1773.
8)Offit PA. N Engl J Med. 2023; 388(6): 481-483.
9)Bobrovitz N, et al.: Lancet Infect Dis. 2023; 23(5): 556-567.