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ファブリー病とは

 

ファブリー病は、細胞内ライソゾームの酵素α-ガラクトシダーゼA(α-galactosidase A: GLA)の遺伝子(GLA)変異により発症する先天代謝異常症です。GLAの酵素活性が低下することで、基質のグロボトリアオシルセラミド(globotriaosylceramide: Gb3またはGL3、別名セラミドトリヘキソシド、ceramide trihexoside: CTH)が腎臓や心筋、血管内皮細胞、自律神経節、汗腺、角膜などの組織に蓄積し、四肢末端痛や発汗障害、その他、腎機能障害、心機能障害、脳血管障害、下痢・腹痛などの消化器症状、難聴・めまいなどの耳鼻科的症状、被角血管腫、角膜混濁など多彩な臨床症状を示します。ファブリー病は、X染色体潜性(劣性)遺伝形式をとりますが、ヘテロ接合体の女性も発症します。

Desnick RJ et al. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease. 8th ed, New York, McGraw-Hill, 2001, 3733-3774.
日本先天代謝異常学会. ファブリー病診療ガイドライン2020. 診断と治療社, 2021, 2-9.
小児慢性特定疾病情報センター(https://www.shouman.jp/disease/details/08_06_091/)
(2022年8月1日閲覧)


疫学

典型的なファブリー病の発症頻度は欧米人で40,000人に1人程度と推定されていましたが1)、日本国内の発現率は、7,700人に1人であることが報告されています2)。また海外および国内のハイリスクスクリーニングの結果から、急性若年性脳梗塞患者では4%3)、慢性腎臓病患者(stage 1-5)では0.48%4)、透析男性患者では0.06〜1.2%4,5)、心肥大患者(左室肥大)では3%6)、新生児スクリーニングでは男児7,057人に1人2)との報告があります。

海外および国内ハイリスクスクリーニングにおけるファブリー病発症頻度の例3-6)

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本文

日本先天代謝異常学会. ファブリー病診療ガイドライン2020. 診断と治療社, 2021, 2-9.
ファブリー病診断治療ハンドブック編集委員会. ファブリー病診断治療ハンドブック 改訂第3版. イーエヌメディックス, 2018, 6.
1) Desnick RJ et al. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease. 8th ed, New York, McGraw-Hill, 2001, 3733-3774.
2) Sawada T et al; Mol Genet Metab Rep, 2020, 22, 100562.
3) Rolfs A et al. Lancet. 2005, 366, 1794-1796.
4) Nagata A et al. Nephrol Dial Transplant. 2022, 37, 115-125.
5) Nakao S et al. Kidney Int. 2003, 64, 801-807.
6) Nakao S et al. N Engl J Med. 1995, 333, 288-293.

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本文

日本先天代謝異常学会. ファブリー病診療ガイドライン2020. 診断と治療社, 2021, 2-9.
ファブリー病診断治療ハンドブック編集委員会. ファブリー病診断治療ハンドブック 改訂第3版. イーエヌメディックス, 2018, 6.
1) Desnick RJ et al. The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease. 8th ed, New York, McGraw-Hill, 2001, 3733-3774.
2) Sawada T et al; Mol Genet Metab Rep, 2020, 22, 100562.
3) Rolfs A et al. Lancet. 2005, 366, 1794-1796.
4) Nagata A et al. Nephrol Dial Transplant. 2022, 37, 115-125.
5) Nakao S et al. Kidney Int. 2003, 64, 801-807.
6) Nakao S et al. N Engl J Med. 1995, 333, 288-293.


病態・病因

細胞内ライソゾームの加水分解酵素であるα-ガラクトシダーゼA(α-galactosidase A: GLA)の遺伝子(GLA)変異により、GLAの酵素活性が低下すると、基質のグロボトリアオシルセラミド(Gb3またはGL3、別名CTH)が腎臓や心筋、血管内皮細胞、自律神経節、汗腺、角膜などの組織に蓄積することにより病変を呈し、全身での組織障害が認められます。

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本文

日本先天代謝異常学会. ファブリー病診療ガイドライン2020. 診断と治療社, 2021, 2-9.
小児慢性特定疾病情報センター(https://www.shouman.jp/disease/details/08_06_091/)(2022年8月1日閲覧)

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本文

日本先天代謝異常学会. ファブリー病診療ガイドライン2020. 診断と治療社, 2021, 2-9.
小児慢性特定疾病情報センター(https://www.shouman.jp/disease/details/08_06_091/)(2022年8月1日閲覧)

本文

ライソゾーム病とは

ライソゾームは、1952年にChristian de Duveにより発見された細胞内小器官であり、脂質やムコ多糖、タンパク質、糖質などを加水分解するさまざまな酵素が含まれます1)。ライソゾームの酵素を先天的に欠損しているために起こる病気がライソゾーム病です。欠損する酵素の種類によりライソゾーム病の症状は異なりますが、酵素により分解されずに蓄積した物質が蓄積することで臓器障害をきたし、年齢とともに症状が進行します2)

1) de Duve C. Nat Cell Biol. 2005, 7, 847-849.
2) 難病情報センター(https://www.nanbyou.or.jp/entry/4063)(2022年8月1日閲覧)

ファブリー病の遺伝子変異と遺伝形式

ファブリー病の疾患責任遺伝子は、X染色体長腕Xq22.1に存在するGLA遺伝子であり、GLA遺伝子の変異によりα-ガラクトシダーゼAの酵素活性が低下します。GLA遺伝子の変異の種類には、ナンセンス変異やミスセンス変異、欠失、遺伝子挿入、スプライシング変異などが報告されています。また、ファブリー病の遺伝形式は、X染色体上のGLA遺伝子の変異に起因するX連鎖遺伝形式をとります。正常アレルと変異アレルを有するヘテロ接合体の女性は変異保有者となり、ヘテロ接合体の女性の子どもは、女児の場合は50%がヘテロ接合体、男児の場合は50%がヘミ接合体となります。

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本文

ファブリー病診断治療ハンドブック編集委員会. ファブリー病診断治療ハンドブック 改訂第3版. イーエヌメディックス, 2018, 7.(一部改変)

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本文

ファブリー病診断治療ハンドブック編集委員会. ファブリー病診断治療ハンドブック 改訂第3版. イーエヌメディックス, 2018, 7.(一部改変)


病状・病型

ファブリー病の典型的な症状である四肢末端痛や発汗障害は、幼児期・学童期から認められますが、30歳以降に自然軽快する傾向があります。20歳以降より尿タンパクや糸球体濾過率の低下、血清クレアチニン値上昇などを呈する進行性の腎機能障害、30歳以降より心肥大や不整脈、心不全を呈する進行性の心機能障害、脳血管障害などの症状が認められます。この他、下痢・腹痛などの消化器症状、難聴・めまいなどの耳鼻科的症状、角膜混濁などの症状も認められます。

日本先天代謝異常学会. ファブリー病診療ガイドライン2020. 診断と治療社, 2021, 2-9.
小児慢性特定疾病情報センター(https://www.shouman.jp/disease/details/08_06_091/)(2022年8月1日閲覧)

 

ファブリー病の特徴的症状

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腎機能障害

腎臓の細胞にグロボトリアオシルセラミド(globotriaosylceramide: Gb3またはGL3、別名セラミドトリヘキソシド、ceramide trihexoside: CTH)が蓄積することにより、細胞の機能障害と組織障害が進行し、糸球体の硬化や尿細管の萎縮、間質の線維化が起こります。思春期の微量アルブミン尿と尿濃縮能の低下から、30歳以降には糸球体濾過率の低下や尿タンパク、40歳以降には末期の腎不全が認められます。

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腎機能障害
心機能障害

心筋細胞にGb3が蓄積することにより、左室肥大や右室肥大を認め、刺激伝導系の細胞におけるGb3の蓄積により心電図異常や不整脈が認められます。症状の進行とともに心機能障害が増悪し、心不全や不整脈が出現します。他臓器障害が認められるファブリー病は古典型、左室肥大を主徴とし、他の臓器障害が認められないファブリー病は心亜型に分類されます。

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心機能障害
脳血管障害

血管内皮細胞や平滑筋細胞にGb3が蓄積することで、血管内腔が狭小化し、頭蓋内小動脈の進行性閉塞の原因となります。また、僧帽弁逸脱症や肥大性心筋症、若年性心筋梗塞の合併による心原性脳塞栓症も脳梗塞の原因となります。脳梗塞はファブリー病の直接の死亡原因となります。

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脳血管障害
神経障害

末梢神経障害による四肢末端痛や肢端感覚異常、自律神経障害による発汗障害、脳血管障害による中枢神経症状が認められます。四肢末端痛は、2歳頃に出現し、運動や発熱、暑い気候により誘発される、周期的に繰り返し認められる激しい疼痛症状です。自律神経障害として、血圧調節機能の障害による血圧の易変動性、腸管運動不良に伴う便秘や下痢、涙や唾液産生の減少に伴う症状が認められます。

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神経障害
耳鼻科的症状

難聴やめまいが認められます。難聴については、自覚症状がない場合でも、全音域にわたり年齢変化に伴う聴力変化以上の閾値の上昇が認められることが多く、聴力の急性増悪も高い率でみられます。

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耳鼻科的症状
消化器症状

消化器症状として、下痢や腹痛が多くみられます。

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消化器症状
皮膚症状

体幹にびまん性の被角血管腫が認められます。数が少ないために気がつかないことも多いですが、学童期から発生し、次第に数(数個〜数十万個)と大きさ(0.1〜5mm大)が増します。この他、エクリン汗腺の分泌部にGb3の蓄積が認められ、自律神経障害とともに発汗障害の原因と考えられています。

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皮膚症状
眼症状

角膜の混濁の他、水晶体や結膜、網膜の病変が認められることがあります。

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眼症状

日本先天代謝異常学会. ファブリー病診療ガイドライン2020. 診断と治療社, 2021, 2-9.
ファブリー病診断治療ハンドブック編集委員会. ファブリー病診断治療ハンドブック 改訂第3版.イーエヌメディックス, 2018, 9-24.

 

 

【総論編】その症状もしかして 見逃さない!あの疾患

【循環器編】疑ってみよう、その症状 原因不明の心肥大の場合

【腎臓編】疑ってみよう、その症状 原因不明の心CKDの場合

ファブリー病 早期診断のために

ファブリー病の病型

男性患者

古典型(classical form)では、幼児期・学童期に初発症状として四肢末端痛や発汗障害を発症し、20歳以降よりタンパク尿、30歳以降に心肥大や脳血管障害、40歳以降より腎機能障害や心機能障害が認められます。遅発型(later-onset formまたはlate-onset form)では、幼児期・学童期の四肢末端痛や発汗障害を示さず、成人期以降に心機能障害のみを呈する心亜型(cardiac variant)や腎機能障害のみを呈する腎亜型(renal variant)など、臨床症状に多様性が認められます。

女性患者(ヘテロ患者)

発症年齢や症状・臓器障害の進行は男性に比べると遅い傾向が認められますが、無症状から重篤な臓器障害を呈するものまで、臨床症状に多様性が認められます。

 

ファブリー病の臨床病型

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本文

日本先天代謝異常学会. ファブリー病診療ガイドライン2020. 診断と治療社, 2021,4.
小児慢性特定疾病情報センター(https://www.shouman.jp/disease/details/08_06_091/)(2022年8月1日閲覧)

画像(SP)
本文

日本先天代謝異常学会. ファブリー病診療ガイドライン2020. 診断と治療社, 2021,4.
小児慢性特定疾病情報センター(https://www.shouman.jp/disease/details/08_06_091/)(2022年8月1日閲覧)