CMV感染・感染症
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サイトメガロウイルス(CMV)について
ヘルペスウイルスの分類
ヘルペスウイルス科に属するウイルスは、ゲノム配列と生物学的特性に基づいて、α、β、γの3つの亜科に分類されます。ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)はβ-ヘルペスウイルス亜科に属し、乳児の突発性発疹の原因ウイルスであるヒトヘルペスウイルス6型、7型(HHV-6、HHV-7)と同一の亜科を構成します。
CMVの構造
CMVはヘルペスウイルス科の中で最大のウイルスで、大きなゲノムをパッケージするウイルス粒子は直径200~230nmあります。ヌクレオカプシド(ウイルスゲノムを取り囲む蛋白質の殻)とエンベロープ(外膜)の間に挟まれた空間のテグメントには、少なくとも32種のウイルス蛋白が存在し、遺伝子の発現調節や免疫の抑制など、細胞の生理状態をウイルス増殖に適した状態に調節する機能を持ちます。また、エンベロープには、感染を成立させるための重要な糖蛋白であるgB(glycoprotein B:UL55)が存在します。
CMVの複製
ヒトの体内において、CMVは神経系、血球系、腺組織、上皮細胞、血管内皮細胞、線維芽細胞、精母細胞など、様々な細胞に感染します。
CMVがヒト宿主細胞に吸着・侵入すると、ウイルスDNAが核内へ放出され、ウイルス合成機能によって複製されます。複製されたDNAはヌクレオカプシドに封入され、その後、テグメントやエンベロープといった構造を獲得し、完全なCMVとなって細胞外へ放出され、他の細胞へと感染が広がります。
CMVのライフサイクル
CMVに感染しても、通常は不顕性感染として経過し、生涯生体内に潜伏感染しています。しかし、免疫抑制、炎症、感染、ストレスなどをきっかけにCMVが再活性化すると、溶解感染(ウイルス産生感染)に移行します。溶解感染とは、複製されたウイルスが細胞外へ放出されることで他の細胞へと感染が拡大することです。免疫機能が正常な宿主では無症候性ですが、免疫不全宿主では、感染を抑制できず侵襲性疾患及び組織損傷を引き起こす可能性があります。
Crough T, et al. Clin Microbiol Rev. 2009;22(1):76-98.
Fishman JA, Am J Transplant. 2013;13(Suppl. 3):1-8.
Crough T, et al. Clin Microbiol Rev. 2009;22(1):76-98.
Fishman JA, Am J Transplant. 2013;13(Suppl. 3):1-8.
CMVの感染経路
CMVの感染は、胎盤・産道・母乳を介する垂直感染、唾液・尿・体液・血液・臓器移植・骨髄移植を介する水平感染によって起こります。初感染後、CMVは潜伏感染し、移植などの易感染性宿主では再活性化し、内因性感染を起こします。未感染の妊婦に初感染が起こると、胎児に垂直感染して先天性巨細胞封入体症を引き起こす場合があるとされています。
日本人のCMV抗体保有率
2010年11月に日本赤十字社東京血液センターにおいて首都圏5都県の献血者から採取した全血2,400検体を、16~19歳及び20~60歳台の各年齢層と性別で12グループに分類し、CMV特異的IgGを測定したところ、平均のCMV特異的IgG抗体保有率は76.3%でした。年齢別にみると、50歳台、60歳台は80%以上のCMV特異的IgG抗体保有率を示しました。一方、10歳台、20歳台では60%前後であり、若年者においては、CMV初感染の予防を考慮した対策が必要となります。
年齢別・男女別のCMV特異的IgG保有率
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