CMV感染・感染症
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CMV感染・感染症について
CMV感染・感染症の定義
CMV感染と感染症
CMV感染とは、CMVの初感染、再感染、潜伏感染からの再活性化によって血液やその他の検体から体内にCMVが同定される状態をいい、感染歴として血清学的に陽性の潜伏感染とは異なります。一方、CMV感染症とは、CMV感染によって臓器障害などの臨床症状を伴っている状態です。
Ljungman P, et al. Clin Infect Dis. 2017;64(1):87-91.
利益相反:著者にはShire(現 Takeda)から助成金を受領した者が含まれる。
Kotton CN, et al. Transplantation. 2018;102(6):900-31.
利益相反:著者にはShire(現Takeda)から助成金等を受領した者が含まれる。
Ljungman P, et al. Clin Infect Dis. 2017;64(1):87-91.
利益相反:著者にはShire(現 Takeda)から助成金を受領した者が含まれる。
Kotton CN, et al. Transplantation. 2018;102(6):900-31.
利益相反:著者にはShire(現Takeda)から助成金等を受領した者が含まれる。
CMV感染症の症状
CMVは様々な臓器を標的とします。発熱、倦怠感、関節痛、筋肉痛などの全身症状のほか、侵襲部位によって下記のような局所症状をきたします。特にCMV網膜炎は、しばしばスクリーニングにおいて無症状で発見されることがあるため、注意が必要です。なお、造血幹細胞移植後の患者さんでは、CMV感染症以外にも様々な要因で同様の症状を呈することがあります。また、全身性のステロイド投与によって発熱などの症状を伴わないこともあるため、注意が必要です。
Ljungman P, et al. Clin Infect Dis. 2017;64(1):87-91.
利益相反:著者にはShire(現 Takeda)から助成金を受領した者が含まれる。
一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会,
造血細胞移植ガイドライン ウイルス感染症の予防と治療 サイトメガロウイルス感染症(第5版), p4, 2022.
Ljungman P, et al. Clin Infect Dis. 2017;64(1):87-91.
利益相反:著者にはShire(現 Takeda)から助成金を受領した者が含まれる。
一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会,
造血細胞移植ガイドライン ウイルス感染症の予防と治療 サイトメガロウイルス感染症(第5版), p4, 2022.
CMV感染・感染症の検査
CMV感染の検査
CMV感染を確認するためには下記の検査などが行われます。なお、標準化定量PCR法も2020年8月より保険適用となりました。
検査によってCMV分離・同定、CMV抗原の検出、CMV DNAの検出、CMV感染細胞の証明などの所見のうちいずれかが認められた場合には活動的なCMV感染と診断されますが、臨床症状を伴うCMV感染症とは区別されます。
CMV感染の検査
- 血清学的検査・各種検体検査
- CMV抗原血症検査(CMVアンチジェネミア法)
- 標準化定量PCR法
- 細胞・組織病理学的検査
一般社団法人日本造血・免疫細胞療法学会, 造血細胞移植ガイドライン ウイルス感染症の予防と治療 サイトメガロウイルス感染症(第5版), 2022.
一般社団法人日本移植学会, 臓器移植関連CMV感染症診療ガイドライン2022, 2022.
CMV抗原血症検査とPCR法
■ CMV抗原血症検査(アンチジェネミア法:AG法)
CMVpp65抗原に対するモノクローナル抗体を用いて、ペルオキシダーゼ法により末梢血中のCMV抗原陽性細胞(多形核白血球)を目視にてカウントする方法です。結果は3~4時間で判明し、抗原陽性細胞数で示します。CMV感染症の発生に先行して陽性化すること、またある程度定量性もあることから、CMV感染のモニタリング、治療開始及び治療終了の指標として有効とされます。わが国では、抗体の種類が異なる2つの測定系(HRP-C7法とC10/C11法)があります。
CMV抗原血症検査(AG法)の検査工程
森沙耶香, 他. 医学と薬学. 2020;77(8):1181-8.
森沙耶香, 他. 医学と薬学. 2020;77(8):1181-8.
■ 核酸増幅(polymerase chain reaction;PCR)法
血液(全血・血漿・血清)や気管支肺胞洗浄液(BAL液)などの検体を用いてCMV DNAを増幅し検出する方法 です。結果表示まで全自動化され、感度が高く、特異性に加えて迅速性がある他、WHO国際標準品に基づきIU/mLで表示されるため、精度管理が行いやすい特徴があります。また、血漿検体を用いることで、患者さんの白血球数に影響されず、様々な理由により血球が回復しない期間にもモニタリング検査が可能となります。
PCR法の検査工程
予防投与と先制治療
抗ウイルス薬の投与方法には、移植直後からCMVの再活性化を予防する目的で投与する予防投与と、CMVの再活性化をモニタリングし、ある一定の基準以上のウイルス量が認められた時点で、臨床症状が発現する前に投与を開始する先制治療があります。
難治性のCMV感染・感染症
難治性のCMV感染・感染症と抗ウイルス薬耐性の定義
難治性のCMV感染・感染症及び抗ウイルス薬耐性の定義は下記のようにまとめられており、難治性のCMV感染は「適切な用量の抗ウイルス薬を2週間以上投与した後にCMV量が増加した場合」と定義されています。
抗ウイルス薬耐性とは、1つ以上の抗ウイルス薬に対する感受性を低下させるCMV遺伝子変異を認めた場合と定義され、多くはCMV UL97及びUL54遺伝子の変異によって引き起こされることが明らかにされていますが、最近ではUL56/89/51、UL27遺伝子の変異も知られています。
Chemaly RF, et al. Clin Infect Dis. 2019;68(8):1420-6.
利益相反:著者にはShire(現Takeda)から助成金等を受領した者及びShire(現Takeda)の社員が含まれる。
Chemaly RF, et al. Clin Infect Dis. 2019;68(8):1420-6.
利益相反:著者にはShire(現Takeda)から助成金等を受領した者及びShire(現Takeda)の社員が含まれる。
抗ウイルス薬耐性CMVの発現経緯
抗ウイルス薬耐性CMVが発現する背景因子には、長期にわたる抗ウイルス薬の投与と、持続的なCMV感染があります。さらに、持続的なCMV感染につながる要素としては、低用量の抗ウイルス薬の投与や低い免疫状態などが考えられます。先制治療の開始後ウイルス量の増加を認めることがありますが、これは患者さんの免疫抑制に起因したものであるため、抗ウイルス薬を使用していない患者さんでは薬剤耐性によるものとは考えにくいです。一方、移植前から治療後にかけて抗ウイルス薬を投与された患者さんでウイルス量が増えた場合は薬剤耐性の関与を否定できなくなります。
Boeckh M, et al. Blood. 2009;113(23):5711-9.
Boeckh M, et al. Blood. 2009;113(23):5711-9.
造血幹細胞移植(HSCT)における難治性CMV感染の有無別のCMV感染症発症率と非再発死亡率(※1)(海外データ)
下記は、同種造血幹細胞移植後100日以内にCMV感染を引き起こした患者さんを対象に、難治性CMV感染を認めた患者さんと認めなかった患者さんにおける、その後のCMV感染症発症率及び非再発死亡率の違いを後ろ向きに解析した成績です。難治性CMV感染は、抗ウイルス薬の全量投与による治療を行っているにも関わらず、2週間を超えてCMV感染が持続している状態と定義されました。結果、難治性CMV感染を認めた患者さんは、認めなかった患者さんに比べてCMV感染症の発症率、非再発死亡率が有意に高い結果でした(p<0.001及びp=0.012、フィッシャーの正確確率検定)。本論文の著者は、予後に影響する要因として抗ウイルス薬の長期投与による薬剤耐性や薬剤毒性が考えられると述べています。
※1 非再発死亡率:原疾患の再発を認めず、合併症により死亡する確率
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