ガイドライン
日本におけるガイドライン
遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema:HAE)診療ガイドライン改訂2023年版
HAE診療ガイドライン改訂2019年版の公開以降、HAEに関する病態解明や治療の進展がみられました。HAEは2種類に分類されます。一つはC1-INH遺伝子異常を認めるHAE-C1-INH(HAE1型/2型と同義)で、もう一つはHAE with normal C1-INH(略称:HAEnCI、HAE3型と同義)です。前版の公開以降、HAEnCIの病因となる新たな遺伝子異常が複数発見されました。治療については、日本でベロトラルスタット(2021年4月承認)、ラナデルマブ(2022年3月承認)、乾燥濃縮人C1-インアクチベーター(2022年9月承認)が「遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制」を適応として、相次いで承認されました。これらの長期予防薬の導入により治療選択肢が拡充し、HAEの治療戦略が変化しつつあります。このような進展を踏まえ、大幅に更新されたHAE診療ガイドライン改訂2023年版が公開されました。
HAE診療ガイドライン改訂2023年版の推奨事項
CQ1
血縁に遺伝性血管性浮腫患者がいる場合には、血管性浮腫の症状がなくても診断のための検査を受けるべきか?
推奨文 | 検査を受けることを推奨する |
根拠の確かさ | C |
推奨の強さ | 1 |
要約 |
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解説 |
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2023年版で初めてHAE患者さんの血縁者の検査に関する推奨事項が加わりました。
⇒患者さんのご家族にも問診・検査を推奨することを目的としたPR動画を公開しています。
・一般向け腫れ腹痛ナビWEBサイト内「ファミリーテストについて」
CQ2
HAEの治療目標はなにか?
推奨文 | 疾病負荷のない日常生活を可能な限り目指すことである |
根拠の確かさ | D |
推奨の強さ | 1 |
要約 |
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解説 |
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2023年版で初めてHAEの治療目標に関する推奨事項が加わりました。
⇒HAEを含む血管性浮腫のQoL評価「AE-QoL」の計算ができます。
・AE-QoLビジュアライザー
CQ3
HAEの急性発作は早急に治療すべきか?
推奨文 | HAEの浮腫発作は可能な限り早急に治療することを推奨する |
根拠の確かさ | B |
推奨の強さ | 1 |
要約 |
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解説 |
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CQ4
HAEのすべての発作は治療の対象になるか?
推奨文 | すべての発作について治療を考慮することを推奨する |
根拠の確かさ | D |
推奨の強さ | 1 |
要約 |
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解説 |
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CQ5
HAEの急性発作に対する第一選択薬はなにか?
推奨文 | 乾燥濃縮⼈C1-インアクチベーター製剤*(商品名:ベリナート®P静注⽤500)、ブラジキニンB2受容体アンタゴニスト(⼀般名:イカチバント、商品名フィラジル®)は、 *C1-インアクチベーターはC1-INHの別名 |
根拠の確かさ | HAE-C1-INH患者に、推奨される A HAEnCI患者に、提案される D |
推奨の強さ | HAE-C1-INH患者に、推奨される 1 HAEnCI患者に、提案される 2 |
要約 |
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解説 |
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⇒フィラジル®の製品情報はこちらからご覧いただけます。(フィラジル®製品概要)
CQ6
HAEの短期予防のための第一選択薬はなにか?
推奨文 | 乾燥濃縮人C1-インアクチベーター製剤*(商品名:ベリナート®P静注用500)は、 *C1-インアクチベーターはC1-INHの別名 |
根拠の確かさ | HAE-C1-INH患者に、推奨される B HAEnCI患者に、提案される D |
推奨の強さ | HAE-C1-INH患者に、推奨される 1 HAEnCI患者に、提案される 2 |
要約 |
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解説 |
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CQ7
HAEの長期予防のための第一選択薬はなにか?
推奨文 | ベロトラルスタット(商品名:オラデオ®)、ラナデルマブ(商品名: *C1-インアクチベーターはC1-INHの別名 |
根拠の確かさ | HAE-C1-INH患者に、推奨される A HAEnCI患者に、提案される D |
推奨の強さ | HAE-C1-INH患者に、推奨される 1 HAEnCI患者に、提案される 2 |
要約 |
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解説 |
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※:HAEに対しては本邦未承認
2019年版の公開後に、オラデオ®、タクザイロ®、ベリナート®皮下注用2000が「遺伝性血管性浮腫の急性発作の発症抑制」に関して本邦承認済みとなりました。2023年版では、HAEの長期予防における推奨事項に、これらの3製剤に関する記述が加わりました。
⇒タクザイロ®の製品情報はこちらからご覧いただけます。(タクザイロ®製品概要)
⇒フィラジル®の製品情報はこちらからご覧いただけます。(フィラジル®製品概要)
CQ8
妊娠HAE患者における発作の治療薬は何が適切か?
推奨文 |
*C1-インアクチベーターはC1-INHの別名 |
根拠の確かさ | D |
推奨の強さ | 1 |
要約 |
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解説 |
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※:HAEに対しては本邦未承認
2023年版で初めて妊娠HAE患者に関する推奨事項が加わりました。
⇒タクザイロ®の製品情報はこちらからご覧いただけます。(タクザイロ®製品概要)
⇒フィラジル®の製品情報はこちらからご覧いただけます。(フィラジル®製品概要)
本ガイドラインにおけるエビデンスレベルと推奨の強さ
〇エビデンスレベル
A(強) :効果の推定値に強く確信がある
B(中) :効果の推定値に中等度の確信がある
C(弱) :効果の推定値に対する確信は限定的である
D(とても弱い) :効果の推定値がほとんど確信できない
〇推奨の強さ
推奨の強さ「1」 :強く推奨する
推奨の強さ「2」 :弱く推奨する(=提案する、考慮する)
推奨の強さ「なし」 :明確な推奨ができない
国際ガイドライン
World Allergy Organization(WAO、世界アレルギー機構)およびThe European Academy of Allergy and Clinical Immunology(EAACI、欧州アレルギー・臨床免疫学会)が共同で作成したWAO/EAACI国際ガイドライン2021年版の記事もご参照ください。
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