HAEとは
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監修:埼友草加病院 院長 大澤 勲先生
HAEの臨床的特徴
遺伝性血管性浮腫(Hereditary angioedema: HAE)は皮下や粘膜に血管性浮腫を繰り返す疾患で、四肢、顔面、消化管に血管性浮腫をきたし、時に致死性の喉頭浮腫を発症します(図)。
図 HAEの臨床的特徴
HAEの歴史と当サイトの目的
遺伝性血管性浮腫(HAE)は、1888年にアメリカ人医師オスラーにより“家族性に血管性浮腫を生じる疾患”として最初に報告され1)、疾患概念が確立されたまれな血管性浮腫です。そもそも、血管性浮腫は、ドイツ人医師クインケが1882年に最初に報告したことからクインケ浮腫という名称で知られており2)、皮膚や粘膜を中心に突発性の浮腫を生じる病態の総称です。
HAEの代表的な病型であるⅠ型/Ⅱ型HAEは、11番染色体の遺伝子変異によるもので、補体第1成分阻害因子(C1-インヒビター: C1-INH)の欠損又は機能障害を引き起こす疾患です。2000年には、C1-INH遺伝子異常を認めない新しいタイプとしてⅢ型HAE(HAE with normal C1-INH)が報告されています。
HAEでは毛細血管の拡張と透過性を亢進するブラジキニンが主たるメディエーターとして働き、皮膚や粘膜深部に一過性の浮腫を生じます。浮腫の発作は、顔面や口唇、四肢、消化管などのさまざまな部位に繰り返します。特に、消化管に浮腫を生じると激烈な腹痛が起こることがあり、喉頭に浮腫を生じると呼吸困難や窒息をきたすこともあります。
HAEは古くから知られていますがまれな疾患で、欧米ではその発症頻度は5万人に1人程度といわれ、人種差もないといわれています3, 4)。
疾患を知っていれば診断は比較的容易であり、診断がつけば有効な治療を受けることができます。しかし、実臨床で診断・治療する機会は少ないことや、一見すると一連の症状に関連性が乏しいため、診断に難渋することが多く、長年診断がつかず苦しまれている患者さんが多いのが現状です。わが国においては、2019年、2023年にHAEガイドライン(一般社団法人日本補体学会)が改訂され、疾患の認知度・診断の向上が期待されています。
当サイトでは、HAE患者さんへの適切な治療情報だけではなく、未診断患者さんのHAE症状を疑い、HAEAと診断を下すための情報、また確定診断後の医療費助成制度情報まで、HAEに関する情報を、特徴、分類・原因・疫学、検査・診断、治療、患者指導、ガイドライン、医療費助成制度の大項目に分け解説しています。
HAEをとりまくわが国の現状
未診断患者を含む患者数(有病率4)より推定) 2,500人
初発からHAEと診断されるまでの期間5) 平均13.8年
1)Osler W: Am J Med Sci 1888; 95: 362–367.
2)Quincke H: Monatsh Prakt Dermatol 1882; 1: 129-131
3)堀内孝彦ら. 補体.2020; 57(1): 3-22.
4)Bowen T et al: Ann Allergy Asthma Immunol 2008; 100: S30-40
5)Ohsawa I et al: Ann Allergy Asthma Immunol 2015; 114: 492-498