免疫不全ライブラリー
患者さん説明用の補足資料
本ページでは、患者さんに原発性免疫不全症候群(PID)を説明する際の材料として、遺伝学的検査や遺伝性疾患に関する内容を掲載しています。
また、本ページと同じ内容の資料を、ダウンロードボタンからダウンロードができます。
PIDを疑う10の徴候・ファミリーテストの資料についても本ページからダウンロード可能です。
あわせて患者さんの診断にご活用ください。
遺伝学的検査の目的1
親の体質が子どもに伝わることを「遺伝」と言います。
体質には顔かたち、体つきのほか、病気のかかりやすさも含まれます。
人の体の状態は遺伝とともに生まれ育った環境によって決まりますが、遺伝は人の形成の基本的な部分で、重要な役割を果たしています。
特に「遺伝子」は遺伝を決定する小単位で、いわば人体の設計図の役割を担っています。
遺伝子の本体は「DNA」(デオキシリボ核酸)という物質でできており、A(アデニン)、T(チミン)、G(グアニン)、C(シトシン)という 4つの塩基の連続した鎖になっています。
これらの塩基がいくつもつながって遺伝子になります。病気の中には、この遺伝子の働きが変化することで発症するものがあります。
このような病気を「遺伝性疾患」と言います。
その病気の原因遺伝子がわかっている場合、遺伝子を調べることでその病気かどうかを確定させることができます。
確定することができれば、その病気に合った適切な治療や健康管理などに役立てることができます。
細胞・染色体・遺伝子・DNAの関係1
- ヒトの体は約40兆個の細胞でできており、それぞれ細胞のなかに染色体が23本×2セット(母由来、父由来)=46本あります。 1~22番までを常染色体、23番目を性染色体といい、女性はX染色体を2本、男性はX染色体を1本、Y染色体を1本もちます。
- 染色体の一部に遺伝子が存在し、遺伝子はDNA(A:アデニン、T:チミン、G:グアニン、C:シトシン)でできています。
遺伝子からタンパク質へ1
細胞のなかでは遺伝子の情報をもとにいろいろな種類のタンパク質がつくられます。
ある染色体に存在する「遺伝子A」を見てみると、DNAのならびにはエキソン領域とイントロン領域があります。
遺伝子変異の例1
DNAのならびに変化が生じるとタンパク質にも変化が起こり、病気を発症する原因となります。
検査の内容と注意事項1
遺伝学的検査の方法
遺伝学的検査では遺伝子の塩基配列を調べ、その病気に関連する変化があるかどうかを調べます。 体中の細胞はすべて同じ遺伝子を持っているので、遺伝学的検査には基本的には採取した血液(約5-10mL)を使用し、DNAを抽出します。
遺伝学的検査の限界
遺伝学的検査では遺伝子の病的変化が見つかる場合もありますが、見つからない場合や、用いた方法では検出困難な場合、また病原性の判定が困難な場合もあります。 これは現在の医学的・技術的な限界と考えられ、将来的に新しい情報が明らかになることもあります。 このため、遺伝子の病的変化が見つからなかったからといって、遺伝的要因が完全に否定されるわけではありませんし、病気自体が否定されるものでもありません。
遺伝学的検査での留意点1
遺伝学的検査の特徴
遺伝子は一生変わらない「不変」のものです。また家族で遺伝子を「共有」している可能性があります。そして、将来の病状や健康管理を「予測」できる可能性があります。 このことから、遺伝学的検査の結果や結果の保存には十分に配慮する必要があります。 また、遺伝情報に基づいて、家族が同じ疾患をもつ可能性や今後の診療方針についてじっくりと話し合うことも必要になるかもしれません。
遺伝学的検査の費用
遺伝学的検査にかかる費用は、対象となる疾患によって異なります。 すでに病気の発症が疑われている場合で、且つ健康保険が認められている遺伝学的検査を実施する場合は、遺伝カウンセリング(1回)も含めて保険診療となります。
*遺伝学的検査を受けるかどうかは、最終的には被検者の自由意志によるものであり、医療者や家族から強制されるものではありません。
*被検者が20歳未満の場合には保護者の代諾が必要となります。
【資料提供】
東京大学医学部附属病院 ゲノム診療部 特任研究員(認定遺伝カウンセラー®)
秋山 奈々 先生、張 香理 先生
Reference
1.新 遺伝医学やさしい系統講義19講 監修 福嶋義光 メディカル・サイエンス・インターナショナル; 2019
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PIDを疑う10の徴候 <小児用>
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