リアルワールドデータ(RWD)の重要性と実臨床での活用


こちらも併せてご覧ください。

医療分野におけるリアルワールドデータ(RWD)とは?
リアルワールドデータ(RWD)とは?その定義や種類から、RWDの活用方法の事例まで、知っておきたいRWDの基本情報と活用のポイントをご紹介します。
この記事では、リアルワールドデータ(RWD)を用いた研究とランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial:RCT)の違いからRWDの重要性、実臨床における活用について、分かりやすく解説しています。
リアルワールドデータ(RWD)の重要性


なぜランダム化比較試験(RCT)だけではなく、リアルワールドデータ(RWD)を活用することが重要なのですか?
RCTは臨床研究のゴールドスタンダードといわれますが、RCTにも欠点や課題があり、それを補完するためにRWDを用いた研究が重要です。RCTの欠点として「5つのtoo」とよばれるものがあり、実際の臨床とはかけ離れた状況で治療の有効性・安全性を検討することとなります。また、RCTを実施するうえでいくつもの課題が存在します。一方、RWDを用いた研究では、患者さんをランダムに割り当てることができず、適応による交絡の影響が避けられないため、統計手法を用いて2群の患者背景がなるべく均一となるように工夫する必要があります1)。
RCTの「5つのtoo」1)
RCTを実施するうえでの課題1)


リアルワールドデータ(RWD)を用いた研究とランダム化比較試験(RCT)の違いは何ですか?
RCTは高度に管理された医療環境における治療の「有効性(efficacy)」を検証しているのに対し、RWDを用いた研究では、日常臨床から得られるデータに基づき、現実の世界における治療の「有用性(effectiveness)」を評価できる点が大きく異なります1,2)。
RWDを用いた研究とRCTの違い1,2)


※1:研究の対象となった患者集団で得られた結果がどれだけ正確であるかを示す度合いです。 RCTは介入群と対照群を無作為に割り付けることで適応交絡を除外できるため、治療効果を判定する研究として最も内的妥当性の高いデザインといえます1)。
※2:得られた研究結果をどれだけ一般化できるか、すなわち普遍性を示す度合いです。 RCTは日常臨床とは異なる実験的な条件下で行われ、対象は限定的な患者集団に絞られるため、RWD研究と比較して外的妥当性が劣ると考えられています1) 。
実臨床でのリアルワールドデータ(RWD)活用
リアルワールドデータ(RWD)はどのように活用することができますか?
RCTが「Can it work?」(効果が最大限発揮されそうな環境で、その治療が有効であるか)を問う一方で、RWDを用いた研究は「Does it work?」 (実臨床の現場において、その治療が有効であるか)を問うことができるといえます1)。例えば、RWDを活用することで、以下のような実臨床に役立つ分析が可能になります2)。
RWDを活用した分析2)


実臨床でリアルワールドデータ(RWD)を活用するメリットは何ですか?
RWDを用いた研究はRCTを代替するものではありませんが、RCTが実施困難または不可能なクリニカルクエスチョンにも答えることができ、RCTを補完することができるという点で重要です2)。RWDを活用するメリットには以下のようなものがあります。
RWDを活用するメリット1,2)


RWDのメリットを活用した大規模な観察研究に注目が集まっています1)。今後、このようなメリットのあるRWDを活用して実臨床に役立つ研究が生まれ、その研究結果が実臨床へ応用されていくことが期待されています2)。
こちらも併せてご覧ください。

医療分野におけるリアルワールドデータ(RWD)とは?
リアルワールドデータ(RWD)とは?その定義や種類から、RWDの活用方法の事例まで、知っておきたいRWDの基本情報と活用のポイントをご紹介します。
【参考文献】
1)康永秀生,他. 超入門!スラスラわかる リアルワールドデータで臨床研究(第1版). 金芳堂. 2019.
2)康永秀生. 医学のあゆみ. 2023; 284(8): 564-567.