フォン・ヴィレブランド病(von Willebrand病)の症状、病型
監修:愛知医科大学病院 中央臨床検査部 教授 中山 享之 先生
フォン・ヴィレブランド病(von Willebrand病)は、VWF(フォン・ヴィレブランド因子)の異常により、⾎⼩板粘着・凝集障害と第Ⅷ因⼦の活性低下が出現する病気です。
止血におけるVWFの役割
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監修:愛知医科大学病院 中央臨床検査部 教授 中山 享之 先生
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監修:愛知医科大学病院 中央臨床検査部 教授 中山 享之 先生
VWFは、⾎管損傷部位に⾎⼩板が粘着・凝集するのをサポートします。また、VWFは、⾎液凝固第Ⅷ因⼦(FVIII)の活性を保護し、⾎管損傷部位へ運搬する働きがあります。
つまりフォン・ヴィレブランド病(von Willebrand病)は、VWFの異常によって一次止血と二次止血の異常をきたし出血傾向が出現します。
フォン・ヴィレブランド病(von Willebrand病)は、⽪膚・粘膜出⾎が特徴的な症状です。
フォン・ヴィレブランド病(von Willebrand病)で見られる出血
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監修:愛知医科大学病院 中央臨床検査部 教授 中山 享之 先生
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監修:愛知医科大学病院 中央臨床検査部 教授 中山 享之 先生
フォン・ヴィレブランド病(von Willebrand病)は、皮膚粘膜出血を特徴とし、鼻出血、口腔内出血、皮下出血、抜歯後・手術後止血困難、外傷後止血困難などを呈します。消化管、関節腔または中枢神経系への出血は、より重度のフォン・ヴィレブランド病(von Willebrand病)で生じます。女性では過多月経、特に初潮時異常出血や流産・分娩時の異常出血、黄体出血が認められます。
フォン・ヴィレブランド病(von Willebrand病)は⼤きく「1型」「2型」「3型」の3つの病型に分類されます。1型と3型は、VWFの量的異常で、2型は質的異常です。
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ADAMTS13:a disintegrin and metalloproteinase with a thrombospondin type 1 motif, member 13
von Willebrand 病(VWD)の診療ガイドライン2021年版 血栓止血誌;2021; 32(4), 413-481 表3より抜粋
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ADAMTS13:a disintegrin and metalloproteinase with a thrombospondin type 1 motif, member 13
von Willebrand 病(VWD)の診療ガイドライン2021年版 血栓止血誌;2021; 32(4), 413-481 表3より抜粋
1型は最も頻度が高く、全フォン・ヴィレブランド病(von Willebrand病)の約70%※を占めます。
2型には2A、2B、2M、2Nの4つのサブタイプがあります。VWFは、ダイマーがいくつも連なったマルチマー構造をとっていますが、高分子マルチマーほど活性が高いとされています。
2A型ではその高分子マルチマーが欠損しています。そのため、血小板粘着・凝集が障害されます。原因として、高分子マルチマーの形成障害、過剰分解が考えられています。2A型はVWDの10~20%を占め、2型の中で最も多いと言われています※。
2B型はVWFのGPIbへの親和性が亢進するため、高分子マルチマーが過剰に血小板に結合します。そのため血小板凝集は亢進しますが、高分子量のVWFが消費性に減少するため出血傾向となります。2B型はVWDの約5%を占めます※。
2M型はVWFの血小板糖タンパクIbを介した血小板への結合機能低下であり、マルチマー構成には異常はありません。
2N型はVWFの第Ⅷ因子結合部位に異常があり、第Ⅷ因子を保護することができません。そのため第Ⅷ因子の半減期が短くなり、その活性が低下します。VWDに多い皮下・粘膜出血はあまり認められませんが、血友病Aと同じく関節内出血などを発症します。血友病Aとの鑑別が必要です。
3型はVWF遺伝子異常のホモ接合体もしくは複合ヘテロ接合体であり、常染色体潜性遺伝形式を呈します。VWF蛋白が完全に欠損する重症型です。発症頻度は100万人に0.5~4人と推定されています※。
von Willebrand病(VWD)の診療ガイドライン2021年版 血栓止血誌:2021; 32(4), 413-481 P429-431より引用