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【Service User】…2023/11/21(火) - 18:05 に投稿

⾎友病性関節症のメカニズム

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血友病

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フォン・ヴィレブランド病(von Willebrand病)

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後天性血友病A
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TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)

TTP(血栓性血小板減少性紫斑病)
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本態性血小板血症(essential thrombocythemia:ET)

本態性血小板血症(essential thrombocythemia:ET)
ETとは
ETの症状
ETの診断
ETの生命予後
ETの血栓症と出血のリスク
ETの治療アルゴリズム

監修:東京医科大学病院 臨床検査医学科 助教 近澤 悠志


出血による関節損傷メカニズム(関節症に至る経緯)

一般的に、単回の関節内出血による滑膜・軟骨への影響は可逆的とされていますが、出血が繰り返される標的関節になると、滑膜炎および骨/軟骨破壊が進行し、やがて不可逆的な関節症に至るとされています。

                                          

                  

 

出血初期の主要な変化


① マクロファージとヘモジデリン(鉄)の増加
・マクロファージは出血の刺激により動員され、異物を貪食することで様々な炎症性サイトカインやケモカインを産生します。
・鉄は赤血球の分解産物であるヘモグロビンの主な材料であり、ヘモグロビンは代謝を受けてヘモジデリンとなり、関節内の組織に沈着します。


出血により生じる滑膜炎の主な特徴


滑膜炎が生じた滑膜では、肥大した組織に新生血管が豊富に存在するために、わずかな刺激であっても出血が起こりやすくなります。その結果、再出血を起こすと、滑膜では血管新生と増殖・肥厚がさらに進展し、より出血を起こしやすくなる、という悪循環が形成されます。
② マクロファージはVEGFをはじめとした血管新生因子の発現を促し、無秩序な血管新生をもたらします。
③ 鉄は滑膜細胞を増殖させるとともにアポトーシスを抑制することで、滑膜の肥厚を惹起します。


出血による骨/軟骨の変化


④ 軟骨において、マクロファージにより産生される炎症性サイトカインと鉄との反応によって酸化ストレスが亢進し、軟骨組織の変性や軟骨細胞のアポトーシスが惹起されます。また、炎症が亢進した滑膜組織から産生された炎症性サイトカインも軟骨損傷の原因になります。
⑤ 軟骨破壊の過程で生じる因子がRANKLやRANK、OPG等の破骨細胞の分化を調節する因子に影響を及ぼし、破骨細胞を活性化させると考えられています。


RANKL:Receptor activator of nuclear factor-kappa B ligand
RANK:Receptor activator of nuclear factor-kappa B
OPG:Osteoprotegerin

 


血友病性関節症の悪循環

画像(PC)
図:血友病性関節症の悪循環
本文

瀧 正志:聖マリアンナ医科大学雑誌 2009, 37(5):319-325より一部改変

画像(SP)
図:血友病性関節症の悪循環
本文

瀧 正志:聖マリアンナ医科大学雑誌 2009, 37(5):319-325より一部改変

繰り返す関節内出血で引き起こされる血友病性関節症は、関節の可動域を減少させ、患者さんの活動に制限を与えてしまいます。関節症を起こさないためには、「出血ゼロ」を目指した治療を行う必要があります。
「出血ゼロ」を目指すためには、患者さんの年齢・体重、出血・関節状況、薬物動態、活動レベルなどを含むライフスタイル、そして夢や目標といった、それぞれの状況をふまえた個別化治療が不可欠です。これらの情報を患者さんと共有し、最適なレジメン設定に活かしてください。
また、関節症の発症・進展を抑制するためには、「適度な運動」と「定期的な関節評価」も重要な要素です。日常的に適度な運動を行い、筋力を低下させないことで、関節への負担を減らすことが期待できます。患者さんの状態に適した運動方法を提案してみてはいかがでしょうか。また、少なくとも1年に1回は、関節評価を実施することもお勧めします。当院では、関節エコーなどの外来診療でも簡単に行うことができる検査を積極的に取り入れつつ、患者さんの関節を定期的に評価しています。関節評価は整形外科医に依頼することもできます。もし、関節可動域が減少している傾向がある患者さんがおられる場合は、早めに整形外科医に相談し、適切な治療を実施してください。
血友病性関節症のメカニズムを理解し、「出血ゼロ」を目指した治療にお役立てください。

血友病性関節症のメカニズム


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