⾎友病性関節症のメカニズム
監修:東京医科大学病院 臨床検査医学科 助教 近澤 悠志
出血による関節損傷メカニズム(関節症に至る経緯)
一般的に、単回の関節内出血による滑膜・軟骨への影響は可逆的とされていますが、出血が繰り返される標的関節になると、滑膜炎および骨/軟骨破壊が進行し、やがて不可逆的な関節症に至るとされています。
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| 出血初期の主要な変化
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血友病性関節症の悪循環
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瀧 正志:聖マリアンナ医科大学雑誌 2009, 37(5):319-325より一部改変
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瀧 正志:聖マリアンナ医科大学雑誌 2009, 37(5):319-325より一部改変
繰り返す関節内出血で引き起こされる血友病性関節症は、関節の可動域を減少させ、患者さんの活動に制限を与えてしまいます。関節症を起こさないためには、「出血ゼロ」を目指した治療を行う必要があります。
「出血ゼロ」を目指すためには、患者さんの年齢・体重、出血・関節状況、薬物動態、活動レベルなどを含むライフスタイル、そして夢や目標といった、それぞれの状況をふまえた個別化治療が不可欠です。これらの情報を患者さんと共有し、最適なレジメン設定に活かしてください。
また、関節症の発症・進展を抑制するためには、「適度な運動」と「定期的な関節評価」も重要な要素です。日常的に適度な運動を行い、筋力を低下させないことで、関節への負担を減らすことが期待できます。患者さんの状態に適した運動方法を提案してみてはいかがでしょうか。また、少なくとも1年に1回は、関節評価を実施することもお勧めします。当院では、関節エコーなどの外来診療でも簡単に行うことができる検査を積極的に取り入れつつ、患者さんの関節を定期的に評価しています。関節評価は整形外科医に依頼することもできます。もし、関節可動域が減少している傾向がある患者さんがおられる場合は、早めに整形外科医に相談し、適切な治療を実施してください。
血友病性関節症のメカニズムを理解し、「出血ゼロ」を目指した治療にお役立てください。