ゴーシェ病治療の選択肢と治療目標
治療
ゴーシェ病の標準治療は酵素補充療法(ERT)です。1型の成人患者では基質合成抑制療法(SRT)も使用可能です1)。そのほか、造血幹細胞移植があります。
ERT
ゴーシェ病の酵素補充療法は、欠損または活性が低下しているグルコセレブロシダーゼを経静脈的に体内に補充する治療法です。
補充された酵素製剤は、マクロファージ表面に存在するマンノース受容体と結合し、マクロファージ内に取り込まれ、ライソゾームに運ばれると、ライソゾーム内に蓄積したグルコセレブロシドを分解します(図1)。
図1 ゴーシェ病におけるERTの作用機序


SRT
ゴーシェ病の基質合成抑制療法は、グルコセレブロシドの合成を抑制し、蓄積を減少させる治療法です。
グルコセレブロシドは、グルコシルセラミド合成酵素を介してセラミドにグルコースが添加され合成されます。このグルコシルセラミド合成酵素を抑制することで、グルコセレブロシドの合成を抑制するのがSRTです(図2)。
図2 ゴーシェ病におけるSRTの作用機序


その他

※本邦未承認
1)ゴーシェ病診断・治療ハンドブック編集委員会・編、ゴーシェ病診断・治療ハンドブック第2版、イーエヌメディックス、東京、2016.
2)成田 綾. シャペロン療法. 衞藤義勝、井田博幸編. ゴーシェ病UpDate, p101, 診断と治療社, 東京, 2016.

※本邦未承認
1)ゴーシェ病診断・治療ハンドブック編集委員会・編、ゴーシェ病診断・治療ハンドブック第2版、イーエヌメディックス、東京、2016.
2)成田 綾. シャペロン療法. 衞藤義勝、井田博幸編. ゴーシェ病UpDate, p101, 診断と治療社, 東京, 2016.
治療選択
ゴーシェ病は病型により症状が異なりますが、ガイドラインでは、年齢・病型を問わず、治療の第一選択はERTとされています1)。
SRTの適応は1型で、16歳以上の患者さんです。患者さんが希望すればSRTによる治療を選択できますが、わが国で承認されているSRT製剤はCYP2D6により高度に代謝されるため、投与前にCYP2D6遺伝子多型検査が必要となります。その結果を踏まえ、アルゴリズムを用いて適応の可否を判断します1)。
また、造血幹細胞移植(HSCT)は合併症などのリスクを考慮すると治療選択肢としてはERT、SRTに次ぐとされています1)。
治療目標
ゴーシェ病では、貧血や血小板減少症などの8項目に対するERTおよびSRTの治療目標として、European Working Group on Gaucher Diseaseより報告されているConsensus documentがあります。わが国のガイドラインにおいても、この治療目標を参考に治療効果判定を行うことが有用とされています1)。
具体的には、ヘモグロビン値や血小板数などの目標数値を達成し、維持することが重要となります。ここでは、井田博幸先生(東京慈恵会医科大学)が提唱されている治療目標をご紹介します(表)。
1)日本先天代謝異常学会編. ゴーシェ病診療ガイドライン2021. 診断と治療社, 東京, 2021.
https://minds.jcqhc.or.jp/docs/gl_pdf/G0001280/4/gaucher_disease.pdf

