STEP2 検査・診断について知る
診断のためのフローチャート
ファブリー病は、臨床症状と検査に基づき診断します。
ファブリー病診断のためのフローチャート

一般的な遺伝子解析法では遺伝子変異を同定できない家系が約5%存在するため、遺伝子変異が同定できない場合の女性ヘテロ患者の診断は、臨床症状と血中Lyso-Gb3の蓄積、尿中あるいは病理検体でのGb3の蓄積の照明などを合わせて総合的に診断する必要がある。
(Laney DA et al. J Genet Couns,2013,22,555-564.より改変)

一般的な遺伝子解析法では遺伝子変異を同定できない家系が約5%存在するため、遺伝子変異が同定できない場合の女性ヘテロ患者の診断は、臨床症状と血中Lyso-Gb3の蓄積、尿中あるいは病理検体でのGb3の蓄積の照明などを合わせて総合的に診断する必要がある。
(Laney DA et al. J Genet Couns,2013,22,555-564.より改変)
臨床症状の確認
ファブリー病を疑わせる四肢末端痛や腎機能障害、心機能障害、脳血管障害などの症状について確認します。また、ファブリー病は遺伝性疾患であり、女性ヘテロ患者の多くは家族歴から診断されることから、家族歴も診断の重要な指標となります。
検査の実施(確定診断)
男性の場合
遺伝学的検査[白血球α-ガラクトシダーゼA(α-galactosidase A: GLA)活性測定またはGLA遺伝子解析]。
女性の場合
遺伝学的検査(白血球GLA活性測定またはGLA遺伝子解析)。ただし、ヘテロ患者など白血球GLA活性が低下しない場合は、GLA遺伝子解析により診断します。またGLA遺伝子解析による遺伝子変異の同定が難しいヘテロ患者については、臨床症状と血中グロボトリアオシルスフィンゴシン(globotriaosylsphingosine: lyso-Gb3)、尿中または病理検体でのグロボトリアオシルセラミド(globotriaosylceramide: Gb3またはGL3、別名セラミドトリヘキソシド、ceramide trihexoside: CTH)の蓄積などを確認し、家族歴を含め総合的に診断します。
※国内において、ファブリー病の家族歴をもたないde novo症例の頻度は6.8%と報告されており、ファブリー病患者の両親にGLA遺伝子変異が認められない場合があります1)。
日本先天代謝異常学会. ファブリー病診療ガイドライン2020. 診断と治療社, 2021, 2-9.
ファブリー病診断治療ハンドブック編集委員会. ファブリー病診断治療ハンドブック 改訂第3版.イーエヌメディックス, 2018, 25-30.
小児慢性特定疾病情報センター(https://www.shouman.jp/disease/instructions/08_06_091/)(2025年1月29日閲覧)
1) Kobayashi M et al. Mol Genet Metab Rep. 2014, 1, 283-287.
検査の種類
1.遺伝学的検査
1.1 白血球α-ガラクトシダーゼA(α-galactosidase A: GLA)活性測定
基質(4-methylumbelliferyl-α-D-galactopyranoside: 4-MU-α-D-Gal)に対する白血球GLAの活性を測定します。男性では正常の10%以下に低下しますが、女性ではヘテロ患者などで低下しない場合があります。

1.2 乾燥ろ紙血を用いた酵素活性測定
ファブリー病が疑われる場合のスクリーニングのために、乾燥ろ紙血を用いてGLA活性を測定することができます。血液採取後、乾燥ろ紙血(DBS)検体として送付いただくと、 スクリーニング結果を確認することができます。ファブリー病患者さんの早期診断、早期治療導入のために、ぜひご活用ください。
※主に男性が対象となります。女性の場合、GLA遺伝子解析が必要となります。

1.3 白血球GLAの遺伝子解析
DNA配列におけるGLA遺伝子のエクソン、イントロン配列を調べ、ファブリー病の原因となる遺伝子変異の有無を確認します。ただし、一般的な遺伝子解析法では変異を同定できない家系が約5%存在します1)。
ファブリー病の診断のための遺伝学的検査は保険収載されています。ただし、衛生検査所にて検査を実施する場合は保険適用となりますが、研究施設で実施する場合は保険適用となりません。検査を依頼される際は、ご注意ください。

日本先天代謝異常学会. ファブリー病診療ガイドライン2020. 診断と治療社, 2021, 2-9.
ファブリー病診断治療ハンドブック編集委員会. ファブリー病診断治療ハンドブック 改訂第3版.イーエヌメディックス, 2018, 25-30.
小児慢性特定疾病情報センター(https://www.shouman.jp/disease/instructions/08_06_091/)(2025年1月29日閲覧)
1) Sakuraba H et al. Mol Genet Metab Rep. 2018, 17, 73-79.
2 その他の検査法(補助診断、保険適用外)
一般的な臨床検査により確認が可能な特異的所見として、尿沈渣中のマルベリー小体・細胞があります。マルベリー小体は灰白色で透明な特徴的な渦巻き状の構造をもった成分として観察されます。
その他の検査により得られる所見は、ファブリー病に非特異的なものですが、補助診断として重要です。
監修:大阪大学医学部付属病院 医療技術検査部門 主任臨床検査技師 堀田 真希 先生
(現:大阪鉄道病院)

2-1. 血中lyso-Gb3、尿中Gb3の測定
ファブリー病患者のスクリーニングに有用な補助診断法の一つです。古典型男性患者では高値を示しますが、遅発型患者や女性ヘテロ患者では軽度~中程度に高い程度で、健常者と区別がつかない例もみられます。
2-2. 尿沈渣中のマルベリー小体・マルベリー細胞の確認
ファブリー病患者の尿沈渣には、灰白色で透明の特徴的な渦巻き状の成分が観察されることがあります。この渦巻き状の成分を桑実小体(マルベリー小体)とよびます。また細胞内にマルベリー小体が認められるものをマルベリー細胞とよび、マルベリー小体と同時に認められることがあります。ただしマルベリー細胞の出現数はマルベリー小体に比較し、とても少ないことを知っておかなければなりません。尿中のマルベリー小体・マルベリー細胞の検出は、ファブリー病の早期発見におけるスクリーニング検査の一つとして注目されています。

監修:大阪大学医学部付属病院 医療技術検査部門 主任臨床検査技師 堀田 真希 先生 (現:大阪鉄道病院)

監修:大阪大学医学部付属病院 医療技術検査部門 主任臨床検査技師 堀田 真希 先生 (現:大阪鉄道病院)
2-3. 腎病理所見、心筋病理所見
腎病理所見、心筋病理所見ともに補助診断として重要です。ファブリー病患者の腎生検検体では、HE染色により糸球体上皮細胞の泡沫状変化、症状の進行により糸球体の硬化像が認められます。さらに腎生検検体のトルイジンブルー染色により、Gb3の封入体が観察できます。また、ファブリー病患者の心筋生検検体では、心筋細胞の空胞化と線維化が認められます。腎生検検体、心筋生検検体ともに、電子顕微鏡により同心円状の構造物であるゼブラボディが認められます。
日本先天代謝異常学会. ファブリー病診療ガイドライン2020. 診断と治療社, 2021, 2-9.
ファブリー病診断治療ハンドブック編集委員会. ファブリー病診断治療ハンドブック 改訂第3版.イーエヌメディックス, 2018, 25-30.
小児慢性特定疾病情報センター(https://www.shouman.jp/disease/instructions/08_06_091/)(2025年1月29日閲覧)
精密検査施設一覧
日本先天代謝異常学会のウェブサイトでは、ファブリー病診断のための精密検査を依頼できる施設が紹介されています。施設の中には、衛生検査所の登録をするなど、医療法の定める検体検査の基準を満たしていない施設も含まれます。検査内容などの詳細については、各施設にお問い合わせください。
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