SIDとは?
監修:関⻄医科⼤学 内科学第⼀講座 主任教授 伊藤 量基 先生
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SIDとは?
生来正常であった免疫系が二次性に障害された場合に起こる免疫不全症を「続発性免疫不全症(SID:Secondary ImmunoDeficiency)」といいます。
原発性免疫不全症(PID:Primary ImmunoDeficiency)と異なり先天的な要因により発症する疾患ではないことから、治療にあたっては、原因を取り除くことが優先されます。そのため、SIDでは治療対象として認識されていない疾患もあります。
ここでは、造血器腫瘍に伴うSIDについて取り上げて解説します。
造血器腫瘍である慢性リンパ性白血病(CLL)や悪性リンパ腫、多発性骨髄腫(MM)などは疾患自体がSIDの原因となったり、B細胞を標的とする薬物が抗体産生不全を引き起こすことで、SIDを招くケースがあります。
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低ガンマグロブリン血症と感染症
低ガンマグロブリン血症において、最も問題となるのが易感染性です。
続発性免疫不全症患者のデータではありませんが、血清IgG値が低下しているPID患者を対象に、肺炎の発症頻度と血清IgGトラフ値の相関性を示したメタ解析が報告されています。本解析では、すべての試験で血清IgGトラフ値の増加に伴い、肺炎の発症頻度は低下し、血清IgGトラフ値が100mg/dL増加する毎に肺炎の発症頻度が27%減少しました。
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免疫グロブリン補充療法(IGRT)
IGRT:Immunoglobulin replacement therapy
低ガンマグロブリン血症の治療選択肢の一つに免疫グロブリン補充療法があります。
原発性及び続発性免疫不全症患者を対象に、免疫グロブリン補充療法の有効性が検討されています。
ドイツの12施設においてIVIG投与を受けた原発性免疫不全症(PID)患者29名、続発性免疫不全症(SID)患者77名の合計106名を対象としています。SID患者の基礎疾患は慢性リンパ性白血病(35%)、多発性骨髄腫(22%)、濾胞性リンパ腫(6%)、その他の非ホジキンリンパ腫(30%)などでした。
免疫グロブリンが投与される前t0における血清IgGトラフ値は500mg/dL(中央値)でした(MM患者を除く)。継続的な免疫グロブリンの投与によりt6では772mg/dLまで上昇しました。
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t0における感染症の発症回数は平均1.8回、抗生物質を必要とする感染症の発症は1.3回でしたが、継続的な免疫グロブリン補充療法により、t6でのそれぞれの回数は0.7回、0.3回と感染症発症回数の減少傾向を示しました。
(F(4.4、179.7)=9.43、p<.001)( p:名目上のp値)
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