PIDを疑う10の徴候
<p><span style="font-family:'Noto Sans', -apple-system, BlinkMacSystemFont, 'Segoe UI', Roboto, 'Helvetica Neue', Arial, 'Noto Sans', sans-serif, 'Apple Color Emoji', 'Segoe UI Emoji', 'Segoe UI Symbol', 'Noto Color Emoji';font-size:12px;">監修:東京医科歯科大学 小児地域成育医療学講座 教授 金兼 弘和 先生</span></p>
小児編
PIDの主な症状は易感染性で、感染が反復又は、遷延化しやすいだけでなく、健常者では問題とならないような病原性の低い菌種による感染もみられます。
以下のPIDを疑う10の徴候のうち1つ以上当てはまる場合は、PIDである可能性が否定できません。そのため、専門医へのコンサルテーションをご検討ください。
PIDのなかには重症複合免疫不全症(SCID)のように、治療を行わないと致死的経過をたどる疾患もあるため、早期診断が極めて重要です。
乳児期は胎盤を通じて移行した母体由来のIgGが枯渇し、自らの抗体産生を開始しますが、IgGが最も低下する時期であるため、健常児でも一般的に感染症に罹患しやすくなります。しかし、感染症が常態化している場合や成長発育が阻害されている場合は、迅速な対応を要するPIDの可能性があり、注意が必要です1)。
小児では肺炎で入院加療を要するケースは珍しくありませんが、年に2回以上反復する場合はPIDを疑うきっかけとなります。その際には原因として気管内異物や解剖学的異常の有無を調べる必要がありますが、これらの可能性が否定された場合、積極的にPIDを疑います1)。
乳児期は胎盤を通じて移行した母体由来のIgGが枯渇し、自らの抗体産生を開始しますが、IgGが最も低下する時期であるため、健常児でも一般的に感染症に罹患しやすくなります。しかし、感染症が常態化している場合や成長発育が阻害されている場合は、迅速な対応を要するPIDの可能性があり、注意が必要です1)。
小児では肺炎で入院加療を要するケースは珍しくありませんが、年に2回以上反復する場合はPIDを疑うきっかけとなります。その際には原因として気管内異物や解剖学的異常の有無を調べる必要がありますが、これらの可能性が否定された場合、積極的にPIDを疑います1)。
小児期に気管支拡張症を発症するのは明らかに異常であり、PIDを疑います。線毛機能不全症候群や嚢胞性線維症の鑑別も必要です1)。
深部感染症はいずれも重篤な感染症であり、2回以上発症した患児は積極的な精査を行う必要があります。ただし髄膜炎であれば髄液漏などの解剖学的要因の検索も行います1)。
小児期に気管支拡張症を発症するのは明らかに異常であり、PIDを疑います。線毛機能不全症候群や嚢胞性線維症の鑑別も必要です1)。
深部感染症はいずれも重篤な感染症であり、2回以上発症した患児は積極的な精査を行う必要があります。ただし髄膜炎であれば髄液漏などの解剖学的要因の検索も行います1)。
薬剤耐性の有無を確認したうえで、感染部位に適した十分量の抗菌薬の内服を2ヵ月以上続けても治癒しない場合には、PIDを念頭においたスクリーニングを行う必要があります。
この場合、解剖学的異常や膿瘍形成の有無も検索する必要があります1)。
小児の副鼻腔は未発達で狭窄しやすい構造であり、感染の温床となるため副鼻腔炎は珍しいものではありませんが、適切な抗菌薬を使用しても重症副鼻腔炎を反復する場合は、精査の対象となり得ます。
その際には繊毛の運動異常を含めた他疾患の可能性も検討する必要があります1)。
薬剤耐性の有無を確認したうえで、感染部位に適した十分量の抗菌薬の内服を2ヵ月以上続けても治癒しない場合には、PIDを念頭においたスクリーニングを行う必要があります。
この場合、解剖学的異常や膿瘍形成の有無も検索する必要があります1)。
小児の副鼻腔は未発達で狭窄しやすい構造であり、感染の温床となるため副鼻腔炎は珍しいものではありませんが、適切な抗菌薬を使用しても重症副鼻腔炎を反復する場合は、精査の対象となり得ます。
その際には繊毛の運動異常を含めた他疾患の可能性も検討する必要があります1)。
小児の耳管は成人に比べて短く水平に走行しており、咽頭から菌が侵入しやすくなっています。そのため、特に乳児は中耳炎にかかりやすいですが、細菌性の中耳炎を頻回に反復する場合は、抗体産生不全症やIgGサブクラス欠損症を疑います1)。
乳児期までの鵞口瘡やカンジダ皮膚炎は、患児の細胞性免疫の未熟性に加えて頻回の授乳・哺乳の影響などさまざまな要因があげられ、一般臨床でよくみられます。疣贅はヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus:HPV)が原因であり、母子感染症としても留意すべき疾患です。これらの疾患が1歳以降になっても持続・重症化する場合には、T細胞性免疫不全などを疑います1)。
小児の耳管は成人に比べて短く水平に走行しており、咽頭から菌が侵入しやすくなっています。そのため、特に乳児は中耳炎にかかりやすいですが、細菌性の中耳炎を頻回に反復する場合は、抗体産生不全症やIgGサブクラス欠損症を疑います1)。
乳児期までの鵞口瘡やカンジダ皮膚炎は、患児の細胞性免疫の未熟性に加えて頻回の授乳・哺乳の影響などさまざまな要因があげられ、一般臨床でよくみられます。疣贅はヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus:HPV)が原因であり、母子感染症としても留意すべき疾患です。これらの疾患が1歳以降になっても持続・重症化する場合には、T細胞性免疫不全などを疑います1)。
BCGは乳幼児の結核感染症の予防に有用ですが、重症複合免疫不全症(SCID)や慢性肉芽腫症(CGD)では骨髄炎などの重症な副反応を起こすことがあります。ロタウイルスワクチン接種による持続感染も認められます。
髄膜炎菌による髄膜炎は補体欠損症に特徴的な症状です。
二次性の血球貪食性リンパ組織球症(HLH)を引き起こす感染症の原因としてEBウイルスはよく知られていますが、重症かつ免疫異常を伴う例ではX連鎖リンパ増殖症候群などのPIDを疑う必要があります1)。
PIDを疑う際、家族歴の聴取は必須事項です。誰が、いつ、どのような感染症にかかったのかを詳細に聴取し、家系図を作成することで疾患の絞り込みを行える可能性があります。患児の親に家族歴を聴取する場合、1回の聴取で終了せず、両親の祖父母や兄弟の家族歴を聴取することで、より詳しい家族歴が得られます。感染症以外に自己免疫疾患や悪性腫瘍、皮膚疾患などの情報も、合併症からPIDを絞り込むのに役立つ場合があります1)。
BCGは乳幼児の結核感染症の予防に有用ですが、重症複合免疫不全症(SCID)や慢性肉芽腫症(CGD)では骨髄炎などの重症な副反応を起こすことがあります。ロタウイルスワクチン接種による持続感染も認められます。
髄膜炎菌による髄膜炎は補体欠損症に特徴的な症状です。
二次性の血球貪食性リンパ組織球症(HLH)を引き起こす感染症の原因としてEBウイルスはよく知られていますが、重症かつ免疫異常を伴う例ではX連鎖リンパ増殖症候群などのPIDを疑う必要があります1)。
PIDを疑う際、家族歴の聴取は必須事項です。誰が、いつ、どのような感染症にかかったのかを詳細に聴取し、家系図を作成することで疾患の絞り込みを行える可能性があります。患児の親に家族歴を聴取する場合、1回の聴取で終了せず、両親の祖父母や兄弟の家族歴を聴取することで、より詳しい家族歴が得られます。感染症以外に自己免疫疾患や悪性腫瘍、皮膚疾患などの情報も、合併症からPIDを絞り込むのに役立つ場合があります1)。
PIDJ: 原発性免疫不全症を疑う10の徴候(http://pidj.rcai.riken.jp/10warning_signs.html) 2023/1/10時点 より作成
1)戸澤 雄介 他: 小児科診療. 2020; 3(17): 299-305.
成人編
PIDの主な症状は易感染性で、感染が反復又は、遷延化しやすいだけでなく、健常者では問題とならないような病原性の低い菌種による感染もみられます。
PIDを疑う10の徴候のうち2つ以上当てはまる場合は、PIDである可能性が否定できません。そのため、専門医へのコンサルテーションをご検討ください。
細菌性の中耳炎が頻回に反復する場合は、抗体産生不全症やIgGサブクラス欠損症を疑います1)。
適切な抗菌薬を使用しても重症副鼻腔炎を反復する場合は、精査の対象となり得ます。その際には繊毛の運動異常を含めた他疾患の可能性も検討する必要があります1)。
細菌性の中耳炎が頻回に反復する場合は、抗体産生不全症やIgGサブクラス欠損症を疑います1)。
適切な抗菌薬を使用しても重症副鼻腔炎を反復する場合は、精査の対象となり得ます。その際には繊毛の運動異常を含めた他疾患の可能性も検討する必要があります1)。
毎年、肺炎を反復する場合はPIDを疑うきっかけとなります。その際には原因として解剖学的異常の有無を調べる必要があります1)。
非結核性抗酸菌は通常は人に感染したり、何らかの症状を引き起こすことはありませんが、もともと呼吸器系の疾患を持っていたり、免疫機能が低下している場合には感染することがあります。そのため、非結核性抗酸菌感染症を罹患した場合には、PIDを疑うきっかけとなります。
毎年、肺炎を反復する場合はPIDを疑うきっかけとなります。その際には原因として解剖学的異常の有無を調べる必要があります1)。
非結核性抗酸菌は通常は人に感染したり、何らかの症状を引き起こすことはありませんが、もともと呼吸器系の疾患を持っていたり、免疫機能が低下している場合には感染することがあります。そのため、非結核性抗酸菌感染症を罹患した場合には、PIDを疑うきっかけとなります。
易感染性のために、抗菌薬の経静脈投与を反復している場合は、精査の対象となり得ます2)。
免疫不全症は、消化管粘膜における免疫装置の二次的障害を惹起するため、吸収不良、慢性下痢症などの消化器症状を呈します。
B細胞不全では、下痢、セリアック病、悪性貧血などの消化管病変を合併しやすく、T細胞不全では、難治性下痢、吸収不良がしばしばみられます3)。
易感染性のために、抗菌薬の経静脈投与を反復している場合は、精査の対象となり得ます2)。
免疫不全症は、消化管粘膜における免疫装置の二次的障害を惹起するため、吸収不良、慢性下痢症などの消化器症状を呈します。
B細胞不全では、下痢、セリアック病、悪性貧血などの消化管病変を合併しやすく、T細胞不全では、難治性下痢、吸収不良がしばしばみられます3)。
これらの疾患が持続・重症化する場合には、T細胞性免疫不全や、真菌に特異的な免疫応答の異常をきたす慢性皮膚粘膜カンジダ症などを疑います1)。
深部感染症はいずれも重篤な感染症であり、2回以上発症した場合は積極的な精査を行う必要があります。例えば髄膜炎であれば髄液漏などの解剖学的要因の検索も行います1)。
これらの疾患が持続・重症化する場合には、T細胞性免疫不全や、真菌に特異的な免疫応答の異常をきたす慢性皮膚粘膜カンジダ症などを疑います1)。
深部感染症はいずれも重篤な感染症であり、2回以上発症した場合は積極的な精査を行う必要があります。例えば髄膜炎であれば髄液漏などの解剖学的要因の検索も行います1)。
主に小児に見られることが多い症状ですが、成人ではPIDを基礎疾患として広範囲のいぼがまれにみられることがあります。
PIDを疑う際、家族歴の聴取は必須事項です。誰が、いつ、どのような感染症にかかったのかを詳細に聴取し、家系図を作成することで疾患の絞り込みを行える可能性があります。両親から祖父母や兄弟の家族歴を聴取することで、より詳しい家族歴が得られます。感染症以外に自己免疫疾患や悪性腫瘍、皮膚疾患などの情報も、合併症からPIDを絞り込むのに役立つ場合があります1)。
主に小児に見られることが多い症状ですが、成人ではPIDを基礎疾患として広範囲のいぼがまれにみられることがあります。
PIDを疑う際、家族歴の聴取は必須事項です。誰が、いつ、どのような感染症にかかったのかを詳細に聴取し、家系図を作成することで疾患の絞り込みを行える可能性があります。両親から祖父母や兄弟の家族歴を聴取することで、より詳しい家族歴が得られます。感染症以外に自己免疫疾患や悪性腫瘍、皮膚疾患などの情報も、合併症からPIDを絞り込むのに役立つ場合があります1)。
難病情報センター: 原発性免疫不全症候群(指定難病65)
(https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/pdf/10warning-AdultPID2015.pdf)2022/1/10時点 より作成
1)戸澤 雄介 他: 小児科診療. 2020; 3(17): 299-305.
2)高田 英俊: 小児感染免疫. 2017; 29(2): 177-182.
3)小林 絢三: 醫學のあゆみ. 1985; 135(9): 766-771. より改変