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【Service User】…2023/11/17(金) - 18:23 に投稿

原発性免疫不全症(PID)について

<p><span style="font-family:&apos;Noto Sans&apos;, -apple-system, BlinkMacSystemFont, &apos;Segoe UI&apos;, Roboto, &apos;Helvetica Neue&apos;, Arial, &apos;Noto Sans&apos;, sans-serif, &apos;Apple Color Emoji&apos;, &apos;Segoe UI Emoji&apos;, &apos;Segoe UI Symbol&apos;, &apos;Noto Color Emoji&apos;;font-size:12px;">監修:東京医科歯科大学 小児地域成育医療学講座 教授 金兼 弘和 先生</span></p>

領域別情報・医療情報

PID ナビ(原発性免疫不全症)

PID ナビ(原発性免疫不全症)
原発性免疫不全症(PID)について
PIDを疑う10の徴候
PIDの診断
PIDの治療
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PIDの概要

本文

原発性免疫不全症(Primary ImmunoDeficiency:PID)とは、先天的に免疫すなわち生体防御機構の破綻によって、免疫機能が低下したり、自己と非自己を区別することができなくなる疾患の総称です。

2022年12月時点で485種類もの疾患が分類されています1)。 最近では先天性免疫異常症(Inborn Errors of Immunity:IEI)とも呼ばれています2)
小児に限らず幅広い世代にわたって診断されるようになり、さまざまな診療科に患者さんが潜んでいる可能性があります。稀な疾患であること、臨床的多様性があることから一見他の疾患としか見えないこともあり、日常診療の中では見逃されがちですが、診断の遅れにより、致死的経過をたどることもあり、早期診断が極めて重要となります。
日本における有病率は、疫学調査が行われた2007年のアンケート結果では、2.3/10万人3)、2018年のアンケート結果では2.2/10万人の有病率と報告されています4)

1)Tangye SG, et al.: J Clin Immunol. 2022; 42(7): 1473-1507.
2)Takada H: Front Immunol. 2021; 12, 803459.
3)Ishimura M, et al.: J Clin Immunol. 2011; 31(6): 968-976.
4)Hosaka S, et al.: J Clin Immunol. 2022; 42(1): 183-194.

 

2007年全国調査結果における各地域の推定有病率

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本文

Ishimura M et al.: Nationwide Survey of Patients with Primary Immunodeficiency Diseases in Japan. J Clin Immunol. 31(6),
968-976, 2011. Springer Nature.

Ishimura M, et al.: J Clin Immunol. 2011; 31(6): 968-976.

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本文

Ishimura M et al.: Nationwide Survey of Patients with Primary Immunodeficiency Diseases in Japan. J Clin Immunol. 31(6),
968-976, 2011. Springer Nature.

Ishimura M, et al.: J Clin Immunol. 2011; 31(6): 968-976.


PIDの原因

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PIDの原因のほとんどは免疫系に関わる分子の遺伝子異常です。

PIDの原因のほとんどは免疫系に関わる分子の遺伝子異常であり、代表的なPIDの原因遺伝子の多くがすでに解明されています。生殖段階から機能獲得型変異や機能喪失型変異が生じていると考えられ、X連鎖潜性(劣性)または常染色体潜性遺伝形式をとるものがほとんどですが、家族歴が明らかでない場合も多く認められます。また、乳児一過性低ガンマグロブリン血症のように一時的な免疫系の未熟性による疾患や、自己免疫性好中球減少症のように自己抗体によると思われる疾患もあります。

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本文

監修:東京医科歯科大学 小児地域成育医療学講座 教授 金兼 弘和 先生

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本文

監修:東京医科歯科大学 小児地域成育医療学講座 教授 金兼 弘和 先生


PIDの病態

本文

感染症に罹りやすくなること(易感染性)が主な症状ですが、自己免疫疾患、悪性腫瘍、自己炎症性疾患、アレルギー疾患を合併する場合もあります。

元来、PIDは病原体に対する免疫応答が欠落することによって易感染性を示す疾患群と考えられていましたが、昨今は易感染性を伴わない自己炎症性疾患なども含んだ大きな疾患概念として捉えられるようになりました。また、遺伝子変異に関しても、機能が低下する変異だけでなく機能が亢進する変異も同定されています4)

4)岡本 圭祐 他: 医学のあゆみ. 2021; 277(9): 817-823.

 

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PIDの分類

本文

PIDは2022年に発表されたIUIS※1分類において大きく10個の疾患に分類されます(表)。

近年、遺伝子解析技術の進歩や分子生物学的解析技術の進歩により、さまざまな免疫に関連した疾患や、それらの原因遺伝子が同定されるようになったことから、2年おきにPIDの国際分類が報告されています。
PIDのなかでも、抗体産生不全症は、全世界において最もよく認められる疾患群であり、全体の半数を占めています(図1)。

※1 IUIS(International Union of Immunological Societies):国際免疫学会連合

表:PIDの分類(IUIS 2022分類)

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※2 IEI (Inborn Errors of Immunity):先天性免疫異常症
Tangye SG, et al.: J Clin Immunol. 2022; 42(7): 1473?1507.より作成

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※2 IEI (Inborn Errors of Immunity):先天性免疫異常症
Tangye SG, et al.: J Clin Immunol. 2022; 42(7): 1473?1507.より作成

図1:全世界におけるPIDの種類の分布

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本文

[Limitation]
本調査はJeffrey Modell Centers Networkに参加する医師を対象として2013年から2015年に実施された調査結果です。アメリカ、カナダ、ラテンアメリカ、東西ヨーロッパ、中東、アジア、オーストラリア、アフリカ地域84ヵ国における253施設602名の専門医(PID患者 n= 89,634)が参加した結果です。

Modell V, et al.: lmmunol Res. 2016; 64(3): 736-753.より作図

画像(SP)
本文

[Limitation]
本調査はJeffrey Modell Centers Networkに参加する医師を対象として2013年から2015年に実施された調査結果です。アメリカ、カナダ、ラテンアメリカ、東西ヨーロッパ、中東、アジア、オーストラリア、アフリカ地域84ヵ国における253施設602名の専門医(PID患者 n= 89,634)が参加した結果です。

Modell V, et al.: lmmunol Res. 2016; 64(3): 736-753.より作図


海外における有病率

現在、米国では新生児スクリーニングが進んでいること、欧州ではレジストリーシステムや、効率的な文書システムの構築、政府を含む関係団体による医療関係者、患者への疾患啓発活動などにより年々診断率は向上しています。日本では、疾患の認知度が低いとも言われており、診断率の向上は今後の課題とされています。(図2)。

図2:各国の有病率(10万人あたり)

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本文

5)Rubin Z, et al.: J Allergy Clin Immunol Pract. 2018; 6(5): 1705-1710.
6)Shillitoe B, et al.: Clin Exp Immunol. 2018; 192(3): 284-291.
7)Marschall K, et al.: Clin Exp Immunol. 2015; 182(1): 45-50.
8)El-Helou SM, et al.: Front Immunol. 2019; 10: 1272.
9)Ishimura M, et al.: J Clin Immunol. 2011; 31(6): 968-976.
10)Hosaka S, et al.: J Clin Immunol. 2022; 42(1): 183-194.

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5)Rubin Z, et al.: J Allergy Clin Immunol Pract. 2018; 6(5): 1705-1710.
6)Shillitoe B, et al.: Clin Exp Immunol. 2018; 192(3): 284-291.
7)Marschall K, et al.: Clin Exp Immunol. 2015; 182(1): 45-50.
8)El-Helou SM, et al.: Front Immunol. 2019; 10: 1272.
9)Ishimura M, et al.: J Clin Immunol. 2011; 31(6): 968-976.
10)Hosaka S, et al.: J Clin Immunol. 2022; 42(1): 183-194.