IBD ステーション
<p>潰瘍性大腸炎・クローン病</p>
CD クローン病|診断
診断の手順(図)
若年者に慢性的に続く腹痛や下痢、発熱、体重減少、肛門病変などがみられ、クローン病(CD)が疑われるときは、理学的所見や病歴(抗菌薬服用歴、海外渡航歴)を確認し、血液検査を行います1)、2)。腸管外合併症が診断の契機となる場合もあるため、既往歴も詳細に聴取します1)。
続いて全消化管検査を実施し、CDに特徴的な腸病変を確認します1)、2)。典型的な画像所見を欠く場合も、非乾酪性類上皮細胞肉芽腫の証明で確診となるため、生検を積極的に行います1)、2)。CDと鑑別が必要な疾患としては、潰瘍性大腸炎(UC)、腸結核、腸管型ベーチェット病、リンパ濾胞増殖症、薬剤性大腸炎、エルシニア腸炎などがあげられます1)。
多くは2週間から1ヵ月で診断可能ですが、診断が確定しない場合はinflammatory bowel disease unclassifiedとして経過を観察します1)。
図:クローン病診断の手順フローチャート
厚⽣労働科学研究費補助⾦ 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)
令和3年度分担研究報告書 潰瘍性⼤腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和3年度 改訂版
厚⽣労働科学研究費補助⾦ 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)
令和3年度分担研究報告書 潰瘍性⼤腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和3年度 改訂版
診断基準(表)
CDの診断は、病歴聴取と身体診察による特徴的な所見から疑診し、内視鏡をはじめとした画像検査等の典型的な所見により確立します1)。
CDの主要所見は以下の3つです1)、2)、3)。
縦走潰瘍:基本的に4~5cm以上の長さで、腸管の長軸に沿った境界明瞭な潰瘍。小腸では腸間膜付着側に、大腸では結腸紐に沿って好発。
敷石像:縦走潰瘍とその周辺小潰瘍間の大小不同の密集した粘膜隆起。
非乾酪性類上皮細胞肉芽腫:生検組織学的検査で特異性の高い所見(単球・マクロファージが集簇したもの)。
副所見としては、消化管の広範囲に認める不整形~類円形潰瘍またはアフタ、特徴的な肛門病変、特徴的な胃・十二指腸病変が挙げられます1)。
表:クローン病の診断基準
<注1>小腸の場合は、腸間膜付着側に好発する。
<注2>連続切片作成により診断率が向上する。消化管に精通した病理医の判定が望ましい。
<注3>典型的には縦列するが、縦列しない場合もある。また、3ヶ月以上恒存することが必要である。また、腸結核、腸管型ベーチェット病、単純性潰瘍、NSAIDs潰瘍、感染性腸炎の除外が必要である。
<注4>裂肛、cavitating ulcer、痔瘻、肛門周囲膿瘍、浮腫状皮垂など。「クローン病肛⾨病変のすべて」を参考にし、クローン病に精通した肛門病専門医による診断が望ましい。
<注5>竹の節状外観、ノッチ様陥凹など。クローン病に精通した専門医の診断が望ましい。
<注6>縦走潰瘍のみの場合、虚血性腸病変や潰瘍性大腸炎を除外することが必要である。敷石像のみの場合、虚血性腸病変や4型大腸癌を除外することが必要である。
<注7>腸結核などの肉芽腫を有する炎症性疾患を除外することが必要である。
厚⽣労働科学研究費補助⾦ 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)
令和3年度分担研究報告書 潰瘍性⼤腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和3年度 改訂版より引⽤改変
<注1>小腸の場合は、腸間膜付着側に好発する。
<注2>連続切片作成により診断率が向上する。消化管に精通した病理医の判定が望ましい。
<注3>典型的には縦列するが、縦列しない場合もある。また、3ヶ月以上恒存することが必要である。また、腸結核、腸管型ベーチェット病、単純性潰瘍、NSAIDs潰瘍、感染性腸炎の除外が必要である。
<注4>裂肛、cavitating ulcer、痔瘻、肛門周囲膿瘍、浮腫状皮垂など。「クローン病肛⾨病変のすべて」を参考にし、クローン病に精通した肛門病専門医による診断が望ましい。
<注5>竹の節状外観、ノッチ様陥凹など。クローン病に精通した専門医の診断が望ましい。
<注6>縦走潰瘍のみの場合、虚血性腸病変や潰瘍性大腸炎を除外することが必要である。敷石像のみの場合、虚血性腸病変や4型大腸癌を除外することが必要である。
<注7>腸結核などの肉芽腫を有する炎症性疾患を除外することが必要である。
厚⽣労働科学研究費補助⾦ 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)
令和3年度分担研究報告書 潰瘍性⼤腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和3年度 改訂版より引⽤改変
潰瘍性大腸炎とクローン病の鑑別診断
UCとCDとでは外科的治療上の方針が異なるため、正確な診断が重要です。UCでは原則として大腸に限局しますが、CDでは口腔内から肛門まで全消化管に病変が生じる可能性があります4)。UCでは直腸から連続性の病変を認めますが、CDでは非連続性病変(skip lesion)となります4)。
鑑別が困難な場合、内視鏡や生検所見を含めた臨床像で確定診断が得られない症例はinflammatory bowel disease unclassified(IBDU)として、あるいは切除術後標本の病理組織学的な検索を行っても確定診断が得られない症例はindeterminate colitis (IC)として経過を観察します1)。経過観察により、UCかCDに特徴的な所見があらわれる場合があります1)。
内視鏡所見・注腸X線検査所見、病理所見からの潰瘍性大腸炎とクローン病との鑑別診断
花井洋行、NPO法人 日本炎症性腸疾患協会(CCFJ)編:潰瘍性大腸炎の診療ガイド 第3版, 文光堂, 東京, pp.6-15, 2016
花井洋行、NPO法人 日本炎症性腸疾患協会(CCFJ)編:潰瘍性大腸炎の診療ガイド 第3版, 文光堂, 東京, pp.6-15, 2016
引用資料
1) 厚⽣労働科学研究費補助⾦ 難治性疾患政策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」(久松班)
令和3年度分担研究報告書 潰瘍性⼤腸炎・クローン病 診断基準・治療指針 令和3年度 改訂版
2) NPO法⼈ ⽇本炎症性腸疾患協会(CCFJ)編:クローン病の診療ガイド 第3版, ⽂光堂, 東京, pp.10-20, 2021
3) 日比紀文監修:チーム医療につなげる! IBD診療ビジュアルテキスト, 羊土社, 東京, pp.34-72, 2016
4) 花井洋行、NPO法人 日本炎症性腸疾患協会(CCFJ)編:潰瘍性大腸炎の診療ガイド 第3版, 文光堂, 東京, pp.6-15, 2016
【監修】国立大学法人東京医科歯科大学 消化器内科 准教授 長堀 正和 先生